アナザー・カントリー (ロッド・スチュワートのアルバム)

ロッド・スチュワート『アナザー・カントリー』解説

『アナザー・カントリー』は、ロッド・スチュワートが2015年にリリースした29枚目のスタジオ・アルバムです。前作『タイム〜時の旅人〜』に続き、本作もオリジナル曲が中心で、新たな音楽的挑戦が随所に散りばめられています。

制作背景

前作の成功が、スチュワートに新たな自信を与え、作曲意欲を刺激しました。彼は本作で、レゲエ、スカ、ケルト音楽といった、これまでとは異なるサウンドを取り入れることに意欲的でした。共同プロデューサーのケヴィン・サヴィガーと共に2013年10月から曲作りを開始し、2014年1月にはレコーディングに入りました。しかし、スチュワートのツアー日程との兼ね合いで作業は断続的になり、最終的なミックスが完了したのは2015年3月でした。

楽曲について

アルバムの冒頭を飾る「ラヴ・イズ」をはじめ、ケルト音楽の要素が取り入れられた楽曲がいくつかあります。スチュワートは、これについて「私に流れるスコットランド人の血を表現する方法の一つ」であり、「素晴らしいフィドル奏者がバンドにいたから」と語っています。

「ラヴ・アンド・ビー・ラヴド」は、スチュワートにとって初のレゲエ・ソングです。タイトルは、恋人に射殺されたリーバ・スティンカンプが、死の直前に「私は、ただ愛して、愛されたいだけ」と語ったことにインスパイアされています。

サッカーをテーマにした「ウィ・キャン・ウィン」は、セルティックFCと同チームのサポーターに捧げられた楽曲です。「ウェイ・バック・ホーム」は、第二次世界大戦下のロンドンの様子を、スチュワートが家族から聞いた話に基づいて制作されました。曲の終盤には、ウィンストン・チャーチルの有名なスピーチ「我々は海岸でも戦う」が引用されています。

「ア・フレンド・フォー・ライフ」は、スチュワートと親交の深いスティーヴ・ハーレイが2001年に発表した楽曲のカバーです。かつてスチュワートのバンドでギタリストを務めていたジム・クリーガンも、共作者としてクレジットされています。

リリースと評価

アルバムに先駆け、2015年6月には「ラヴ・イズ」のミュージック・ビデオが公開されました。アルバムは通常盤とデラックス・エディション盤の2種類でリリースされ、日本盤CDはデラックス・エディション盤に準拠した内容となっています。デラックス・エディション盤に収録されたボーナス・トラックの1つ「イン・ア・ブロークン・ドリーム」は、スチュワートが1960年代末期にオーストラリアのバンド「パイソン・リー・ジャクソン」にセッション・シンガーとして参加した際の録音です。

アルバムは全英アルバムチャートで最高2位を記録し、自身20作目の全英トップ3アルバムとなりました。音楽評論家からの評価は分かれており、AllMusicは5点満点中3.5点を付け、ケルト音楽やカントリーの要素を取り入れた点を評価しました。一方、『ガーディアン』紙は5点満点中2点を付け、スティーヴ・ハーレイのカバーを評価する一方で、アルバム全体の出来には批判的な評価を下しています。

収録曲

1. ラヴ・イズ - Love Is
2. プリーズ - Please
3. ウォーキング・イン・ザ・サンシャイン - Walking in the Sunshine
4. ラヴ・アンド・ビー・ラヴド - Love and Be Loved
5. ウィ・キャン・ウィン - We Can Win
6. アナザー・カントリー - Another Country
7. ウェイ・バック・ホーム - Way Back Home
8. キャン・ウィ・ステイ・ホーム・トゥナイト? - Can We Stay Home Tonight?
9. バットマン・スーパーマン・スパイダーマン - Batman Superman Spiderman
10. ザ・ドリンキング・ソング - The Drinking Song
11. ホールド・ザ・ライン - Hold the Line
12. ア・フレンド・フォー・ライフ - A Friend for Life

『アナザー・カントリー』は、ロッド・スチュワートの音楽的な冒険心と、彼自身のルーツへの回帰が感じられる作品と言えるでしょう。

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