アナスタシア・ミハイロヴナ

メクレンブルク＝シュヴェリーン大公妃アナスタシア・ミハイロヴナ：華麗なる生涯と悲劇的な最期

アナスタシア・ミハイロヴナ大公女（1860年-1922年）は、ロシア帝国皇帝ニコライ1世の曾孫にあたる、ロシア大公ミハイル・ニコラエヴィチ大公の娘として生まれました。幼少期は、父がカフカース総督を務めたグルジアのティフリスで、壮麗な宮殿の中で過ごしました。6人の兄弟の中で唯一の娘だった彼女は、「スタッシー」と呼ばれ、父親の深い愛情を受けて育ちました。一方、母オリガは厳格で、兄弟たちとは異なる教育をアナスタシアに施しました。

黒髪とエメラルドグリーンの目を持ち、長身で凛とした容姿のアナスタシアは、独立心が強く意志の強い女性に成長しました。18歳になった頃、母の仲立ちと、マリア・パヴロヴナ大公妃（ウラジーミル・アレクサンドロヴィチ大公妃）の働きかけにより、メクレンブルク＝シュヴェリーン大公世子フリードリヒ・フランツとの縁談話が持ち上がります。彼は資産家で、大公家の跡継ぎでありながらも、喘息を患う病弱な青年でした。将来の安定を考慮し、アナスタシアはこの結婚を受け入れました。

1879年、ペテルブルクの冬宮で盛大な結婚式が挙行され、2人はシュヴェリーンへ新生活をスタートさせました。しかし、厳格で古風なシュヴェリーンの宮廷生活は、自由奔放なアナスタシアにとって苦痛でした。彼女はホームシックになり、ドイツ文化にも馴染むことができませんでした。結婚直後から妊娠し、長女アレクサンドリーネをドイツで出産します。夫の健康状態も考慮し、温暖なイタリアやフランスでの滞在が増えていきます。

1883年、夫が即位し、アナスタシアはメクレンブルク＝シュヴェリーン大公妃となりました。当初は社交界の華として地位を楽しみましたが、すぐに再びイタリアやフランスへの旅に出るようになりました。1886年には、フランスのカンヌで次女ツェツィーリエを出産します。彼女はシュヴェリーンにほとんど戻らず、モンテカルロのカジノに頻繁に通い、リヴィエラ社交界で華やかな生活を送りました。大公フリードリヒ・フランツは、妻の奔放な生活を理解し、生涯彼女を愛し続けました。

1897年、フリードリヒ・フランツはカンヌのヴィラで謎の転落死を遂げます。大公妃アナスタシアは国民から殺害の容疑をかけられますが、実際には大公自身の病気が原因であると推測されています。夫の死後、アナスタシアは多額の遺産を相続しました。15歳の息子フリードリヒ・フランツ4世が摂政の下で即位し、アナスタシアはますますシュヴェリーンとの距離を置くようになりました。

1902年、アナスタシアは私設秘書との間に私生児アレクシスをニースで出産しました。このスキャンダルは、やがて明るみに出ることになります。第一次世界大戦勃発後も、アナスタシアはフランスにとどまりました。ドイツとロシアという複雑な立場の中で、彼女は中立国スイスに移り、ローザンヌで暮らしました。ロシア革命によって、彼女の兄弟たちがボリシェヴィキによって殺害されたことを知ります。

終戦後、アナスタシアは再びフランスに戻り、カンヌ近郊に別荘を構えて過ごしました。1922年、甥のパーティーに出席した直後、急死しました。シュヴェリーンで行われた葬儀には、子供たちが集まりました。

アナスタシア・ミハイロヴナは、ロシア貴族社会、ドイツ宮廷、そしてフランスのリヴィエラを舞台に、華麗で奔放な生涯を送り、その最期は謎に包まれたまま、波乱に満ちた人生の幕を閉じました。彼女の子孫は、ヨーロッパ王室の歴史に名を残しています。

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