アニエロ・デラクローチェ

アニエロ・デラクローチェ：ガンビーノ一家の影の支配者

アニエロ・ジョン・デラクローチェ（1914年3月15日-1985年12月2日）は、ニューヨークを拠点とするマフィア組織、ガンビーノ一家の主要メンバーでした。彼は「ニール」「帽子」「背の高いヤツ」「ポーラック」など、数々の異名で知られており、その生涯は謎と暴力、そして忠誠心に彩られています。「ポーラック」という異名は、かつてポーランド系の愛人を持っていたことに由来すると言われています。さらに、警察や敵対組織を欺くためか、人前では「オニール神父」と名乗り、神父服を着て街を歩くこともあったと伝えられています。

シチリア州ヴェネト出身のデラクローチェはアメリカに移住し、リトル・イタリーで育ちました。しかし、彼の若かりし頃の経歴は不明な点が多く、ヴィンセント・マンガーノ率いる「殺人株式会社」のメンバーだったという説も存在します。ガンビーノ一家における彼の台頭は、カルロ・ガンビーノがアルバート・アナスタシアを暗殺した後、アナスタシア一家を掌握した1957年以降と考えられています。

1970年、ジョー・ビオンドの引退に伴い、デラクローチェはアンダーボス（副ボス）に就任します。ガンビーノ一家きっての武闘派として知られ、ジョン・ゴッティら多くの強力な部下を率いていました。カルロ・ガンビーノ政権下ではボスに最も近い存在と目されていましたが、ボスには昇格しませんでした。

1975年、カルロ・ガンビーノが死去。後継者には、デラクローチェではなく、血縁関係にあったポール・カステラーノが指名されました。ガンビーノの死後、脱税容疑で服役していたデラクローチェが出所すると、直ちに一家幹部との会議が開かれました。デラクローチェはガンビーノ一家内で高い人気を誇っており、もし望めば、ガンビーノの指名を覆してボスに就くことも可能だったかもしれません。しかし、彼はガンビーノの遺志を尊重し、カステラーノに従うことを選びました。この決定は、特にゴッティらデラクローチェの部下を衝撃に陥れました。

カステラーノは麻薬取引に積極的なゴッティやアンジェロ・ルッジェーロらを嫌っており、このことがガンビーノ一家に「ポール派」と「ニール派」という派閥を生み出すことになります。カステラーノは、デラクローチェを恐れていたのか、通常は禁じられているデラクローチェの麻薬ビジネスを黙認していたとも伝えられています。

1985年12月2日、デラクローチェは肺癌のため死去します。彼の死後、ゴッティらはカステラーノ暗殺を計画し、2週間後に実行に移しました。ゴッティがカステラーノへの怒りを燃やしたのは、カステラーノがデラクローチェの見舞いにも葬儀にも出席しなかったこと（当時カステラーノは他のファミリーのボスと共に起訴されており、公の場に出ることを避けていた）に起因するとも言われます。しかし、デラクローチェ自身はゴッティに対し、カステラーノの暗殺を阻止しようとしていたとも伝えられています。デラクローチェはニューヨークのセント・ジョーンズ墓地に埋葬されています。

ニューヨーク市警のマフィア専門家である元刑事ラルフ・サレルノは、数々のマフィアと対峙してきた経験から、カーマイン・ギャランテと共に、デラクローチェの鋭い眼光に背筋を凍らされたと語っています。1996年のテレビ映画『Gotti』では、アンソニー・クインがデラクローチェを演じました。デラクローチェの生涯は、ガンビーノ一家の歴史における重要な一章であり、彼の死は、その後の一連の出来事に大きな影響を与えたと言えるでしょう。

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