アパレシーダの聖母

アパレシーダの聖母：ブラジルの国民的聖母

アパレシーダの聖母（Nossa Senhora da Conceição Aparecida）は、ブラジルで最も敬愛される聖母マリア像であり、国民的聖母として深い信仰を集めています。その名は、ポルトガル語で「現れた聖母」を意味し、18世紀初頭にサンパウロ州のアパレシーダで起こった出来事に由来しています。

聖母像の発見と奇跡

1717年、パライーバ川で漁をしていた3人の漁師は、不漁に悩んでいました。諦めかけたその時、投げ入れた網に聖母マリアの像の胴体が引っかかりました。驚いた漁師たちが再び網を投げ入れると、今度は聖母像の頭部が姿を現しました。そして、さらに網を投げ入れると、大量の魚が獲れました。この奇跡的な出来事をきっかけに、聖母像は人々の信仰を集めるようになりました。

漁師の1人が聖母像を自宅に持ち帰り、家族や近隣住民が祈りを捧げるようになりました。すると、聖母像の前で多くの奇跡が起こったという証言が相次ぎました。人々の信仰は次第に広がり、アパレシーダの聖母は「褐色の聖母」の愛称で親しまれるようになりました。

聖堂の建設と聖地の宣言

1734年、ロス・コケロス（Los Coqueros）の丘に最初の聖堂が建設されました。その後、多くの巡礼者が訪れるようになり、1834年には「古いバジリカ」と呼ばれる教会が建てられました。

1930年、ローマ教皇ピオ11世によってアパレシーダの聖母は「ブラジルの保護者」と宣言されました。さらに、1955年には新バジリカの建設が始まり、1980年には教皇ヨハネ・パウロ2世が建設中のバシリカの献堂式を行いました。そして1984年、アパレシーダの聖堂はブラジルの聖地として宣言され、その地位は不動のものとなりました。

ブラジルにおける信仰

アパレシーダの聖母への信仰は、ブラジル人の生活に深く根付いています。10月12日はアパレシーダの聖母の日として、ブラジルの国民祝日に制定されています。この祝祭日には、ブラジル各地から大勢の巡礼者がアパレシーダに集まり、聖母への感謝と祈りを捧げます。また、サンパウロの神乃家厳戸神社ブラジル大神宮でも、アパレシーダの聖母は祭神として祀られています。

アパレシーダの聖母は、単なる宗教的な偶像ではなく、ブラジルの人々の信仰、文化、歴史を象徴する存在となっています。聖母像の発見から現在に至るまで、アパレシーダの聖母はブラジルの人々の生活に寄り添い、希望と慰めを与え続けているのです。その信仰は、今後もブラジルの人々の心に深く刻まれていくことでしょう。

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