アフウラ

アフウラ：ハワイの王族を飾った至宝の羽衣

アフウラ（ハワイ語: ʻahu ʻula）は、「赤い上衣」または「聖なる上衣」を意味し、ハワイの伝統的な羽衣です。マヒオレと呼ばれる羽毛の兜とセットで、最高位の族長や王族（アリイ）の象徴として用いられました。アフウラの大きさは身分の高さを表し、丈の長いクローク型は最高位のエリートのみが着用を許されました。

アフウラの特権

アフウラの着用は、原則として王族や高位の族長に限られていましたが、特別な武勲を立てた戦士にも所持が許されることがありました。羽衣には物理的な防御力だけでなく、霊的な守護力が宿ると信じられており、着用者のマナ（霊力）が羽衣に宿り、父祖の霊力が子孫に伝えられると考えられていました。

アフウラの製法

アフウラの製作には、高度な技術と膨大な時間、そして希少な素材が必要とされました。土台となる網は、イラクサ科の植物オロナの繊維を手作業で結んで作られ、その網に、主に赤や黄色の羽根が隙間なく丁寧に編み込まれていきました。一枚の羽衣を完成させるためには、数十万羽もの鳥の羽根が必要だったと言われています。

羽根の種類と採取

アフウラに使われる羽根は、主にハワイ固有の鳥から採取されました。赤い羽根は、ベニハワイミツスイ（イイヴィ）やアカハワイミツスイ（アパパネ）から、黄色い羽根は、フサミツスイ属（オオ）やキゴシクロハワイミツスイ（ハワイ・マモ）といった絶滅種の鳥から採取されました。特に黄色い羽根は希少で、カメハメハ大王は、黄色い羽根を採取するために鳥を生け捕りにして放鳥することを命じました。しかし、19世紀にはこの命令は守られなくなり、鳥は食用にもされるようになりました。

鳥類の保全

ハワイ王国では、赤い羽根の鳥は捕殺が許されていましたが、黄色い羽根の鳥は生け捕りにして放鳥することが義務付けられていました。しかし、19世紀になるとこのタブーは薄れ、鳥の数が激減しました。ハワイ・マモは19世紀末に絶滅し、オオ属も1987年に最後の種が絶滅しました。ハワイミツスイの減少には、環境破壊や病気なども影響していると考えられています。

アフウラの変遷

初期のアフウラは、網目が粗く、地鶏などの大きめの羽根で覆った上に飾り羽根を付けていました。後期には、より細かく編まれた網を使用し、飾り羽根を直接付けるようになりました。形状も長方形から円弧状に変化しましたが、長方形のものはハワイ国外に持ち出されたものが多く、現在ではあまり知られていません。

クック航海とアフウラ

1778年、ジェームズ・クック船長がハワイに到達した際、多くの羽衣が収集され、ヨーロッパに持ち帰られました。クック船長自身も、カラニオプウ王から羽衣と兜を贈られています。これらの収集品は、後に博物館や美術館に収蔵されました。

現存するアフウラ

現在、世界各地の美術館や博物館に約160点のアフウラが現存しています。その中でも、ホノルルのビショップ博物館は、カメハメハ大王が所蔵していたとされるマモ鳥の羽衣など、貴重なアフウラのコレクションを所蔵しています。

アフウラをめぐる逸話

カラカウア王は、1883年の戴冠式でカメハメハ大王のアフウラを着用しました。また、世界一周旅行の際には、家伝のアフウラを侍従に着用させたものの、様々な騒動を引き起こしました。

アフウラは、単なる装飾品ではなく、ハワイの歴史、文化、そして人々の精神が込められた至宝です。その美しさと希少性を通して、古代ハワイの社会や価値観を垣間見ることができます。

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