アブキールの戦い (1799年)

アブキールの戦い（1799年）

1799年7月25日、エジプトのアブキールにおいてフランス軍とオスマン軍との間で激しい戦闘が繰り広げられました。この戦いは、ナポレオン・ボナパルトが指揮するフランス軍がサイード・ムスタファ・パシャ率いるオスマン帝国軍に勝利を収めた重要な戦闘であり、第一次アブキール会戦としても知られています。

背景

この戦闘の背景には、エジプトにおけるフランスとオスマン帝国の間の緊張があります。オスマン軍はエジプトを奪還するため、イギリスのシドニー・スミス指揮する艦隊によってエジプトに送られました。一方、フランス軍はシリアから戻ったところであり、再び戦闘に臨む準備を整えていました。

サイード・ムスタファ・パシャの戦略

サイード・ムスタファ・パシャは、過去にロシア軍と戦った経験豊かな指揮官でした。彼は、フランス軍の方陣に対する騎兵の突撃が効果が薄いことを理解しており、浜辺に二重の防御線を築いてフランス軍の攻撃に備えようとしました。彼はこの陣地からエジプトに侵入できると考えていましたが、その計画には重大な欠陥が潜んでいることをナポレオンは瞬時に見抜いていました。

戦闘の経過

開戦とともに、フランス軍はオスマン軍の築いた第一の防衛線に攻撃を仕掛け、これをあっさりと突破しました。しかし、次の第二の防衛線は簡単には打破できず、一旦フランス軍は退却を余儀なくされました。その間、オスマン軍は負傷者に止めを刺し、死者を切り刻む冷酷な行動に出ました。

この瞬間を逃さず、フランスの騎兵隊指揮官ジョアシャン・ミュラは彼の部隊を率いて突撃を行い、遮蔽物のないオスマン軍を迅速に駆逐しました。ミュラの攻撃は驚異的な速さで行われ、彼はムスタファのテントに突入し、オスマン軍の指揮官を捕らえました。彼はサーベルでムスタファの指を二本切り落としましたが、ムスタファも反撃し、ミュラの顎に一発撃ち込みました。

戦闘の終息

この直後、オスマン軍はパニック状態に陥りました。数多くの兵士が、沖合に停泊していたイギリス軍艦まで泳いで逃げようとした結果、溺死する者が続出しました。残りの兵士たちはアブキールの砦に逃げ込みましたが、まもなくして降伏することとなりました。戦闘の結果、オスマン軍は約8000の死者・負傷者を出す一方で、フランス側はおおよそ1000人の被害にとどまりました。

戦いの意味

この戦闘の勝利の報をナポレオンがフランスに到着する前に、彼の元に届けられました。この勝利はナポレオンへの人気を一層高める結果となり、同時に総裁政府との間に深刻な問題を引き起こす種となりました。第一次アブキール会戦は、軍事的な成功だけでなく、政治的にもその後の展開に大きな影響を与えることになります。


関連項目に「アブキールの戦い（1801年）」がありますが、この1799年の戦いと関連して理解することも重要です。

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