アブノーマルチェック

『アブノーマルチェック』は、1996年にナムコ（現・バンダイナムコエンターテインメント）によって開発・発売されたアーケードゲームです。当時のアーケードゲームとしてはユニークなジャンルである、プレイヤーの価値観や感性を診断するゲームとして登場しました。

概要

このゲームの最大の特徴は、事前に実施されたアンケートに基づいた二者択一式の問題を通じて、プレイヤーが「普通の人間（ノーマル）」か、あるいは「価値観が世間一般からずれている人間（アブノーマル）」かを診断する点にあります。ゲームの結果は、専用の用紙に印刷されて提供されました。同時期にナムコがリリースした『技脳体』や『余命検索サービス X-DAY』など、結果をプリントアウトする形式のゲーム群の一つです。筐体には過去のプレイヤーの解答データが蓄積されていくため、同じ問題でも多数派と少数派の割合が変動することがあり、それがゲームの面白さにも繋がっていました。また、設置されている店舗がある地域によって、その土地固有の文化や習慣にまつわる問題が出題されるのも特徴の一つでした。

ゲームシステム

ゲームは1人から最大3人まで同時に参加可能です。開始にあたり、プレイヤーは自身の性別と、成年か未成年かの情報を入力します。これらの情報は、出題される問題の内容に影響を与えました。

次に、以下の6種類のコースから挑戦したいテーマを選択します。

経験: 幼少期から現在までの様々な経験に関する診断
「したした！小中学校編」「ヤバッ！私生活編」「ヤッちゃえ！体験編」
性格: プレイヤーのパーソナリティに関する診断
「するする編」「そうする編」「どうする編」
金銭: 金銭感覚やお金に対する価値観に関する診断
「1万円でスル？編」「100万円でスル？編」「金が大事？編」
好み: 日常的、あるいは非日常的な嗜好に関する診断
「日常的嗜好編」「非日常的嗜好編」「さわやかエログロ編」
恋愛: 恋愛観や異性に対する価値観に関する診断
「経験者は語る編」「好み＆嗜好編」「ヤッちゃう？編」
○○都道府県民の診断: 筐体設置場所の都道府県に特化した質問で、その土地の県民性を診断。
「レベル1初級編」「レベル2中級編」「レベル3上級編」

コースを選択すると、二者択一の問題が出題されます。プレイヤーは制限時間10秒以内にAまたはBのボタンを押して解答します。解答後、事前に集計された50人分のアンケート結果と、その筐体に蓄積された最大450人分の過去の解答、合計で最大500人の回答データにおける多数派と少数派の割合が発表されます。プレイヤーが多数派を選んだ場合、その多数派のパーセンテージに応じた得点が加算されますが、少数派を選ぶと減点されるシステムでした。このプロセスを3ブロック合計10問（3問、3問、4問）繰り返します。最終的に獲得した点数によって、「ノーマル」「アブノーマル」それぞれ10段階、合計20段階でプレイヤーの価値観が診断され、結果がプリントアウトされる、という流れでした。

診断結果

プリントアウトされる診断書には、以下の項目が記載されていました。

ランク: ノーマルまたはアブノーマル、そしてその段階（Aランクが最高評価）
コース別の項目: 選択したコースに応じた詳細な診断コメント
世間様同意率: 自分の解答がどれだけ世間一般に同意されたかの割合
逸材度: 世間からどれだけ逸脱しているかを示す指標

具体的な診断ランク名は、ユニークなものが多数ありました。

ノーマル

Aランク: 常識の神様
Bランク: この街の法律
Cランク: この街の生き字引
Dランク: この街の常識
Eランク: この街の一般人
Fランク: 生まれ持っての小市民
Gランク: 今どきの男の子女の子
Hランク: 一人上手なあんちくしょう
Iランク: いい意味で個性的
Jランク: 常識的なサル

アブノーマル

Jランク: 君、はじけすぎ
Iランク: 一風変わった人
Hランク: 変！
Gランク: ああ、黄昏の奇特人間
Fランク: 常識的な女王様
Eランク: 飛び出せ！奇人変人
Dランク: はっちゃけ！ヘンタイ番長
Cランク: かっとび！ヘンタイ軍曹
Bランク: ぶっとび！ヘンタイ将軍（カリブ海風）
Aランク: アブノーマルの神様

また、コース別の診断結果も詳細で、例えば以下のようなコメントが記載されました。

都道府県別: あなたの田舎者な瞬間、あなたに相応しい都道府県、この土地に馴染んでる度
性格: あなたがついしてしまう事、あなたの隠れ趣味、あなたに相応しい職業
恋愛: あなたの殺し文句、あなたに相応しい異性、あなたのベッドでの癖
金銭: あなたに相応しい1万円活用法、あなたに相応しい100万円活用法、あなたがお金より尊いと思う物
好み: あなたの本当は好きな食べ物、あなたに相応しいニックネーム、明日のウンコ予報
経験: 小学生時代のあなた、あなたの普段よくする行動、あなたの来世

小ネタ

ナムコのゲームらしい遊び心も随所に散りばめられていました。プレイヤーの代理となるキャラクターは、男性ならバーコード頭にトランクス姿の中年男性、女性ならビキニ姿の金髪女性という、非常に個性的なデザインでした。プレイヤー全員が多数派の答えを選ぶとキャラクターは喜びますが、誰かが少数派を選ぶと、選んだプレイヤーのキャラクターが首を引っこ抜かれたり、忍者に暗殺されたりといった、少しシュールでコミカルながらもひどい演出が展開されました。さらに、複数人でプレイした場合、最終的に最もアブノーマルと診断されたプレイヤーのキャラクターには、特に酷い目に遭う演出が用意されていました。最終問題前にはキャラクターの後姿が見られますが、中年男性キャラクターの背中には湿布が4枚も貼られているという細かい描写もありました。また、デモ画面には同社の格闘ゲーム『鉄拳』シリーズのキャラクター、三島一八と平八がデフォルメされて登場するなど、他のゲームからのカメオ出演も見られました。

これらの要素が組み合わさることで、『アブノーマルチェック』は単なる診断ゲームに留まらない、エンターテイメント性の高いアーケードゲームとして記憶されています。

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