アポロA-003

アポロA-003：緊急脱出システム試験の概要

アポロA-003は、アメリカのアポロ計画において実施された4回目の緊急脱出用ロケット（LES）発射試験です。この試験の主な目的は、LESのカナード（前翼）が機能する上限高度での性能を検証することでした。

試験の目的と背景

LES試験は、アポロA-003で4度目となります。今回の試験では、リトル・ジョーIIロケットにアルゴルモーターを6基まで増設し、アポロ司令・機械船の模型とLESを搭載して打ち上げられました。また、司令船をLESの排気ガスから保護するための前部熱保護カバー（Forward Boost Protective Cover）が新たに取り付けられました。

試験の実施と結果

1965年5月19日13時1分4秒（UTC）、ロケットは打ち上げられましたが、離陸からわずか2.5秒後に予期せぬ回転運動を開始しました。このため、予定よりも低い高度でLESが点火されることとなりました。しかし、展開されたカナードと姿勢制御装置が機能し、毎秒約260度というロール運動を停止させ、機体を安定させることに成功しました。

当初予定されていた高高度でのLES分離実験は失敗に終わりました。しかし、今回の試験で新たに開発されたカナードが、予期せぬ事態においても極めて効果的に機能することが証明されました。この結果は、今後のLES開発において重要な知見となりました。

カナードの役割と重要性

カナードは、ロケットや航空機などの機体の前部に取り付けられた小さな翼であり、機体の姿勢制御に重要な役割を果たします。アポロA-003の試験では、このカナードが緊急時に機体を安定させる能力が実証されました。これは、宇宙飛行士の安全を確保する上で非常に重要な要素でした。

まとめ

アポロA-003の試験は、予定通りの結果とはなりませんでしたが、新しいカナード設計の有効性を実証するという重要な成果を上げました。この試験で得られた知見は、アポロ計画の成功に不可欠なものとなりました。

参考資料：Apollo Maniacs

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