アミロイド

アミロイド

アミロイド（Amyloid）は、特徴的なクロスβ構造を持つ、水に溶けにくい繊維状のタンパク質凝集体です。生体の組織や臓器に異常に蓄積すると、アミロイドーシスをはじめとする疾患、特に神経変性疾患の原因となると考えられています。

名称の由来と定義

「アミロイド」という名前は、当初ヨウ素との反応がデンプン（ラテン語でamylum）に似ていたことに由来しますが、後にタンパク質であることが判明しました。

アミロイドの定義は分野によって異なります。

古典的な組織病理学的定義

細胞外に沈着し、βシート構造が積層したクロスβ構造を持つタンパク質凝集体で、コンゴーレッド染色で青リンゴ色の複屈折を示すもの。ただし、近年細胞内アミロイドも発見され、この定義だけでは不十分とされています。

生物物理学的な定義

生体内や試験管内で形成され、クロスβ構造を持つポリペプチドの重合体全てを含む広範な定義。コンゴーレッド反応を示さないものも含まれます。本稿では、主にこの定義に基づき解説します。

アミロイドの構造と性質

アミロイドを構成するタンパク質は、分子が集まりクロスβシート構造と呼ばれる特定の高次構造を形成します。この構造は繊維の軸と平行なβストランドとして集合体を形成し、アミロイド繊維（フィブリル）となります。βシートは短い距離で繰り返し折り畳まれ、この構造が組み合わさって繊維を形成します。

アミロイドは、蛍光染料を用いた染色とその光学特性、赤外分光法、X線回折など、「ゴールドストランドテスト」と呼ばれる手法で同定されることがあります。

病気との関連性

アミロイドの沈着と疾患との関係は複雑です。アミロイドの蓄積は組織構造を物理的に破壊したり、特定の細胞機能に干渉したりすることで病態に関与することが示唆されています。近年では、完成したアミロイド繊維よりも、形成過程の中間体の方が細胞にとってより毒性が強く、細胞死の原因となる可能性が有力視されています。

アミロイド沈着がミトコンドリア機能障害を引き起こし、活性酸素種（ROS）の過剰生成を招くことが、細胞死シグナルとなり得るという研究も報告されています。

機能性アミロイドの存在

全ての体内アミロイド様構造が病理的ではありません。大腸菌のカーリ、クモの糸、酵母プリオンなど、生物にとって有用な生理機能を持つアミロイド様構造も存在します。

検出技術

医療現場では、アミロイド症診断に組織染色が広く用いられます。チオフラヴィンTやコンゴーレッドなどの染料はアミロイドのクロスβ構造に結合し、蛍光や特徴的な青リンゴ色の複屈折を示します。コンゴーレッド染色は現在でも基本的な手法です。アミロイド以外の組織構造を見やすくするため、ヘマトキシリン・エオシン染色と組み合わせて用いられることもあります。近年は、免疫組織化学など、より特異性の高い新しい技術も開発されています。

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