アムステルダム市庁舎内の散策

アムステルダム市庁舎内の散策

『アムステルダム市庁舎内の散策』、または『散策への出発』は、17世紀のオランダ絵画の巨匠、ピーテル・デ・ホーホによって1663年から1665年ごろに油彩で制作された作品です。この作品は、ストラスブール美術館に所蔵されており、目録番号213として知られています。特に、デ・ホーホがアムステルダムで活動していた時期に描かれたものであることは、作品の重要性を高める要因となっています。

作品の概要

絵画では、アムステルダム市庁舎（現在のアムステルダム王宮）を背景に、上流階級の夫婦が優雅に散策している様子が描かれています。男性は、赤と白の羽根を持った広いブリムの帽子をかぶり、流行の襞のある袖とカラーがついた白いシャツ、そして赤いマントを纏っています。一方、女性は金糸の刺繍が施された胴着を着ており、ヴェールで部分的に顔を隠しながら、右手で黄色いスカートの裾を持ち上げています。

画面右側には、夫妻とともにいる犬が見え、この犬が二人を追っている様子が描かれています。さらに、彼らの背後には、子供を抱えた乳母が描かれ、家庭的なシーンが強調されています。前景には円形に配されたタイルがあり、後景では四角いタイルが使われています。これにより、絵画の構成は一層の効果を持っています。

構図の要素と色彩

左右には列柱と付け柱が配置されており、視線を開いたドアへと自然に導きます。このドアの向こうには高い窓やテーブル、椅子が描かれています。そのテーブルには明るい朱色のテーブルクロスや椅子のクッションが配され、男性のマントと調和する色彩を呈しています。部屋の色調はタイルの模様によっても変わり、白黒の市松模様へと変化しています。

描き直しとその影響

元々、奥の部屋には別の男性が描かれていたとされていますが、その部分は後に塗りつぶされてしまいました。1827年にこの作品が売却された際に、塗りつぶされる前の男性についての記録が残っています。また、犬の前景も異なる方式で描かれています。それにもかかわらず、デ・ホーホの真作としての評価は揺らぐことなく、他の画家による作品である可能性は否定されています。

関連作品とデ・ホーホのスタイル

デ・ホーホは市庁舎内部を描いた別の作品も残しており、その中にはオランダ黄金時代の特徴的なスタイルであるカーテンを使った構図などが見られます。また、アムステルダム市庁舎内には大理石の彫像が存在し、絵画内に描かれたレリーフはアルトゥス・クェリヌスによる作品です。

絵画の来歴

この作品は、1827年にアムステルダムのH・レイドンにより最初に売却され、その後1850年から1857年にかけてハドザー・ハウスに保管されていました。最終的にE・ウォーネックから購入されたヴィルヘルム・フォン・ボーデにより、ストラスブール美術館に現存しています。

この作品は、デ・ホーホの筆致による美しい表現と、当時の上流階級の生活様式を見事に捉えており、絵画史においても重要な位置を占めていると言えるでしょう。

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