アメリカがん協会

アメリカがん協会（American Cancer Society: ACS）

アメリカがん協会（ACS）は、1913年にアメリカ合衆国で設立された、がんと向き合う人々を支援し、がんの根絶を目指す主要な非営利組織です。ジョージア州アトランタに本部を置き、「情報提供」「患者支援」「調査研究」という三つの活動の柱を通じて、その使命を果たしています。

設立の経緯と初期の歩み

ACSは、1913年5月22日、ニューヨークにて「American Society for the Control of Cancer（ASCC）」として、10名の医師と5名のビジネスリーダーによって創設されました。この時代、「がん」という言葉は公の場で口にすることがタブー視され、病気に関する情報は社会的な恐怖や忌避感によって覆い隠されがちでした。毎年多くのアメリカ国民ががんで命を落としていたにも関わらず、病気への理解は進んでいませんでした。

このような状況を変えるため、設立者たちが最優先課題としたのは、がんに対する社会的な認識を高めることでした。彼らは精力的な啓発活動を展開し、医師や看護師、そしてがん患者とその家族に対する教育に注力しました。国内外の著名な雑誌や専門誌に記事を発表したほか、独自の月刊刊行物「Campaign Notes」を創刊し、定期的にがんに関する有用な情報を発信しました。また、全米から医師を募り、一般市民向けのがん教育活動を担わせるなど、草の根レベルでの普及活動に努めました。組織名が現在の「American Cancer Society」に変更されたのは、1944年のことです。

組織の拡大とシンボル

活動が進むにつれて、組織は拡大していきます。1936年には、現場で働く代理人のマージョリー・イルリグが、「がんとの戦争」を戦うための新たな力として、ボランティアによる大規模なネットワークを構築することを提案しました。この提案は実現し、1935年から1938年にかけて、がん管理に関わる人々の数は劇的に増加し、1万5千人から15万人に達しました。特に、ASCCの下で活動していたボランティアグループ「Women’s Field Army」は、このボランティアの増加に大きく貢献したとされています。

協会の象徴として、1928年に導入された剣のシンボルがあります。これはブルックリン出身のデザイナー、ジョージ・E・デュランが生み出したもので、剣の持ち手にある二匹の蛇は、協会の科学的側面と医学的側面を象徴し、刃はがんを制御し、がん管理運動を前進させる精神を表していると説明されています。

現在の活動と財政基盤

今日、アメリカがん協会は全米各地に3400を超える拠点を展開し、幅広い支援を提供しています。情報提供の分野では、公式ウェブサイトや各種パンフレットを通じて、最新の治療法に関する情報から、がん治療後の後遺症への対応策、そして患者会の案内まで、多岐にわたる正確な情報を分かりやすく提供しています。患者支援の面では、24時間体制での電話相談窓口の設置や、治療中の外見の変化に対応するためのウィッグの貸し出しなど、個々の患者さんの多様なニーズに応えるプログラムを数多く実施しています。

さらに、ACSはがんに関する革新的な調査研究への資金提供を積極的に行っています。新しい予防法、診断法、治療法の開発を支援することで、未来のがん医療の進歩に貢献しています。協会の年間予算は約900億円規模に及びますが、その活動資金の大部分は、企業や多くの市民からの温かい寄付によって支えられています。

近年の組織再編

近年における大きな動きとして、2013年に実施された大規模な組織再編が挙げられます。ACSは2012年に約9億3400万ドルの資金を調達し、翌年の組織再編には約9億4300万ドルを投じました。この再編は、主にコスト削減と運営効率の向上を目的としたものでした。組織運営はより中央集権化され、各地に分散していた系列団体は統合されました。この過程で一部の従業員は新たな職を求める状況となりましたが、組織全体の合理化が進められました。

アメリカがん協会は、1世紀以上にわたる活動を通じて、がんに立ち向かうための知識の普及、患者への寄り添い、そして科学的な突破口の探求において、重要な役割を果たし続けています。

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