アメリカ合衆国憲法修正第16条

アメリカ合衆国憲法修正第16条について

アメリカの法律において、憲法修正第16条（1913年批准）は、税制に大きな変革をもたらしました。この修正条項により、連邦議会は所得税を課す権限を確立しました。これは、1895年の「ポロック対農夫貸付信託会社事件」の判決が撤回されたことに起因しています。先の判決では、最高裁は特定の所得税が憲法に違反すると判断し、税金が州の人口に比例して配分される必要があるとしました。

修正第16条が生まれる背景

アメリカ合衆国憲法では、税金を課す権限が第1条第8節で規定されています。直接税は州ごとの人口に比例して配分される必要があるため、所得税は従来間接税と同様の扱いを受けていました。1894年にウィルソン・ゴーマン関税法が施行され、4,000ドル以上の収入に対して課税されることが試みられましたが、この法律は最高裁で違憲とされ、所得税は間接税として扱われ続けました。

ポロック判決とその影響

ポロック判決では、最高裁が資産由来の所得に対する税は直接税として扱うべきであり、したがって人口に比例して配分されると裁定しました。これにより、所得税の強制は1895年から1913年まで政治的に実現不可能となりました。この結果、アメリカの税制は多様性を持たなくなり、富の集中に対する不安感が高まりました。

修正第16条の批准過程

1887年に社会主義労働者党が累進的な所得税を提唱するのを皮切りに、複数の党と政治家が所得税の導入を支持しました。修正案は1909年に提出され、1913年に4分の3の州で批准されました。批准はニューメキシコ州が行い、これにより修正第16条は憲法の一部となりました。これによって、議会は州別に税金を配分することなく、あらゆる収入源に対して税を課す権限を得たのです。

修正第16条の効果

この修正により、アメリカ合衆国では簡素化された納税システムが形成されました。ポロック判決が撤回されたことで、税金がどの収入源から発生するかにかかわらず一律に課税されるようになり、重要な転換点となりました。具体的には、賃金や手当などの労働収入に対する課税が可能になり、連邦政府が財政的に強化されるとともに、所得税の適用範囲は広がりました。

判例における修正第16条の解釈

この修正に関しては、連邦裁判所で多くの判例があり、時代とともに解釈が変化しています。例えば、1916年のブラッシャバー判決では、修正第16条がポロック判決を排除していることが確認されました。また、1955年のグレンショー・グラス判決では、所得税は「富の継承や明らかに認識されるものである」との基準が設けられ、税の範囲の定義が明確になりました。

税抗議者の議論

修正第16条の批准とその適用には議論もあり、税抗議者たちはその有効性や適用範囲に疑問を呈しています。彼らの論争では、修正の合法性が争われることがありますが、修正第16条は依然としてアメリカ合衆国の税制の基礎となっています。これにより、連邦議会は広範かつ直接的に国民の所得に対して課税することが可能となり、現代のアメリカにおける税体系が構築されていったのです。

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