アメリカ合衆国有色軍

アメリカ合衆国有色軍（United States Colored Troops, USCT）

アメリカ合衆国有色軍（USCT）は、アメリカ合衆国陸軍において、主にアフリカ系アメリカ人の兵士を中心に編成された部隊です。この軍団は1863年から1865年までの南北戦争期間に活動し、多くの部隊が北軍の戦力として重要な貢献を果たしました。USCTにはアフリカ系アメリカ人だけでなく、太平洋諸島の有色人種、アジア系アメリカ人、インディアンなども参加しており、国籍や人種を超えた多様性が特徴です。

1. 歴史の背景

1862年、アメリカ合衆国は第2押収法を可決し、叛乱する所有者の奴隷を解放しました。そして、解放された奴隷を軍務に従事させることが可能となりました。当初、リンカーン大統領は黒人兵士の募兵に対して懐疑的でしたが、北軍の状況が悪化するにつれ、彼の方針も変わり、1863年からは本格的に黒人兵士の募兵が行われました。

USCTの編成は、北部の兵士たちが南部での戦いに参加する際に、白人士官の指揮のもとで行われ、当初は指揮官の昇進には制限がありました。このような状況の中、1863年には有色軍募兵監理委員会が設立され、黒人兵士に対する無料の軍事訓練などが行われました。

2. 戦闘と活動

戦争終結時には、USCTは175個連隊を拡充し、北軍全体の約10%を占めましたが、彼らの戦闘には多大な犠牲も伴いました。戦争全体で282人の戦闘犠牲者を出し、病気などの他の原因でも68,178人が失われました。USCT連隊は、南北戦争の様々な戦闘に参加し、その中でも特にリッチモンド・ピータースバーグ方面作戦のクレーターの戦いやナッシュビルの戦いが記憶されています。

また、彼らは南軍による過酷な扱いに直面し、捕虜となった場合は通常の捕虜交換が行われず、多くが残虐な扱いを受けました。特に、テネシー州のピロー砦での戦いでは、大きな虐殺の被害者となりました。

3. 戦後の影響と評価

戦争が終結した1865年以降、USCTの連隊は解体されましたが、多くの元兵士は正規軍の黒人部隊として再編成され、後にアメリカ合衆国陸軍において重要な役割を果たしました。アフリカ系アメリカ人兵士の勇気と貢献は、彼らが新しい権利を獲得する上で極めて重要な意義を持ちました。サルバドール・ダグラスは「黒人が軍服を纏う時、彼らの市民権は誰にも否定できない」と述べています。

最近では、USCTとその貢献を特集した多くの書籍や映画が制作され、彼らの功績が再評価されています。1996年には、USCTを記念する国家式典が開催され、アフリカ系アメリカ人南北戦争賞のための記念施設も設立されました。

4. 映画と文化

映画『グローリー』は、USCTの戦闘や訓練過程を描いた作品で、多くの人々に彼らの物語を伝える役割を果たしています。この映画は、多様な人種の兵士たちが南北戦争を通じて示した献身や苦悩、そして勝利への道を描いています。

USCTの歴史は、アメリカの人種問題や市民権の運動において重要な位置を占めており、その遺産は今なお私たちに影響を与えています。彼らの勇気ある行動と献身は、国家の歴史に新たな一歩を刻んだのです。

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