アメリカ海兵隊下士官刀

アメリカ海兵隊下士官刀：歴史と特徴

アメリカ海兵隊下士官刀（Marine Corps noncommissioned officer's sword）は、アメリカ海兵隊の下士官向けに制定された軍刀です。1859年に採用され、原型となったのはアメリカ陸軍のM1850軍刀です。M1859下士官刀、または単に下士官刀とも呼ばれています。

概要

M1859下士官刀は、M1850軍刀をベースに改良が加えられたものです。真鍮鋳造の柄を持ち、握りは黒革巻きで真鍮線が巻かれています。刀身はやや湾曲しており、樋（フラー）が彫られています。片刃ですが、先端部分は両刃となっています。鞘は黒革製で、真鍮製の鯉口、鐺、剣吊り用金具が備えられています。

歴史

アメリカ独立戦争以降、アメリカ海兵隊では将校と下士官の帯刀が義務付けられていました。当初、下士官は陸軍と同一の軍刀を帯びていたと考えられていますが、陸軍用軍刀の帯刀が正式に定められていたわけではありませんでした。1820年代半ば頃、海兵隊下士官向けに新しい軍刀が製造されました。これは陸軍用軍刀よりも刃渡りが短い彎刀で、真鍮鋳造の柄には鷲頭の飾りが付いていました。同時期の1826年には、海兵隊士官向けにマムルーク刀風の軍刀が採用されました。現在でも海兵隊士官は、これに類似した軍刀を使用しています。

1850年に陸軍がM1850軍刀を士官用として採用して以来、海兵隊もこれを制式の士官用軍刀として配備してきました。しかし1859年、M1850軍刀を元に海兵隊独自の士官用軍刀が開発され、同年、下士官にも類似したM1859下士官刀の装備が認められました。士官用と下士官用には細部に違いがあり、特に以下の点が顕著でした。

士官用鞘の真鍮部品には金メッキが施されていたが、下士官用鞘は通常の真鍮部品。
士官用軍刀の握りには鮫皮が使用されたが、下士官用は通常の黒革。
* 士官用鞘は3点（鯉口、鐺、中間）の真鍮部があったが、下士官用は2点（鯉口、鐺）のみ。

M1859下士官刀は海兵隊下士官の標準的な軍刀となり、南北戦争でも使用されました。以降、細部の改良を加えつつ、現在まで使用され続けています。1852年に海軍が採用したM1852海軍士官刀よりも採用が古く、M1859下士官刀はアメリカ全軍の装備の中で、途切れることなく運用されている最古の装備となっています。

種類

開発当初のM1859下士官刀は、M1850軍刀と同様に重く幅広の刀身を持っていました。M1850軍刀のようなエッチングではなく、研磨処理が施されていました。1875年にエッチング処理が認可され、以降は標準的な仕様となりました。同年以降、海兵隊先任下士官は新形の剣吊りが付いたベルトを着用するようになりましたが、第二次世界大戦中に廃止されました。また、1859年以来禁止されていたマムルーク型の旧士官用軍刀の帯刀が再び許可されたのも1875年でした。1918年には刀身がより細身のものに変更されましたが、以降はほとんど改良や変更が加えられずに使用され続けています。

儀礼用途の他、下士官および部隊指揮官である上級下士官は、許可を得た場合に限り、冠婚葬祭の際に帯刀することが認められています。

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