アメリカ精神医学会

アメリカ精神医学会の概要

アメリカ精神医学会（APA）は、精神科医や医学者で構成され、精神科領域に専門性を持つ内科医も参加する学会です。会員数は約36,000名に達し、アメリカ合衆国やカナダを中心に、世界中にその会員が広がっています。APAは多数の専門誌を発行し、特に『精神障害の診断と統計マニュアル』、通称DSMの発行を通じて精神医学の基準を示しています。このマニュアルは、50万部以上の販売を記録しており、精神障害の診断と治療において重要な役割を果たしています。

歴史的背景

アメリカ精神医学会の起源は1844年にさかのぼります。この年、フィラデルフィアで「アメリカの精神病院監督員協会（AMSAII）」が設立されました。これは精神医学の発展に向けた重要なステップとなりました。

1921年にはアメリカ精神医学会が正式に設立され、1927年には法人化されました。その後、1948年には精神医学の新しい標準分類システムの作成が開始され、1952年にはDSM Iが初めて出版されました。このように、アメリカ精神医学会は精神障害に関する診断基準の整備において、歴史的に重要な役割を果たしてきました。

ゴールドウォーター・ルール

アメリカ精神医学会には、倫理規定第7.3節があり、これは「ゴールドウォーター・ルール」として知られています。このルールは、精神科医が公の場で、直接診察していない公共の人物について非倫理的な評価を行うことを禁じるもので、特に公職に立候補している人物への職業的意見を発することを制限しています。このルールは、1964年に発行されたFact誌の記事に端を発しています。

この特集では、当時の大統領候補であったバリー・ゴールドウォーターに関する評価を行うことの倫理性について議論が巻き起こりました。精神科医たちは彼が大統領に適しているかの投票を求められ、その結果ゴールドウォーターは名誉毀損で訴訟を起こし、75,000ドルの賠償金が認定された経緯があります。現在もこの倫理規定は有効であり、精神科医たちが遵守すべき重要な基準となっています。

結論

アメリカ精神医学会は、精神医学の発展と倫理基準の維持に重要な役割を担い続けています。その活動を通じて、精神障害の理解と治療に関する指針を提供し、多くの精神科医や患者に影響を与える存在です。APAは今後も精神医学の最前線をリードし、より良い精神的健康の実現に向けた努力を続けていくことでしょう。

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