アメリカ軍の国籍旗

アメリカ合衆国軍の国籍旗

ここでは、アメリカ合衆国の軍隊、特に海軍などで掲揚される国籍旗について述べます。現在の国籍旗は、2019年6月から再び使用されるようになった「ユニオン・ジャック」という旗です。この名称はイギリス国旗の通称と同じですが、デザインは異なります。

現在の「ユニオン・ジャック」

現行のユニオン・ジャックは、アメリカ国旗である星条旗の左上部分（カントン部）のデザインをそのまま拡大したものです。この旗に描かれている星の数は、星条旗と同様に合衆国を構成する州の数を表しています。そのため、新しい州が加わるたびに星の数も増えていくことになります。現在の星の数がデザインに採用されたのは、1960年7月4日が最初です。

軍艦における国籍旗と星条旗

多くの国が軍艦旗と呼ばれる独自の旗を定めているのに対し、アメリカ合衆国では、軍艦旗として特別な旗を制定せず、代わりに国旗である星条旗を掲揚しています。また、一般的に軍艦旗は停泊時に艦尾に掲げられることが多いですが、アメリカ海軍の艦艇では航行中であっても星条旗をメインマストに掲げるのが特徴です。国籍旗は通常、艦首に掲げられます。

軍艦旗が儀礼として半旗で掲げられる際、国籍旗も合わせて半旗とするのが一般的な慣例ですが、アメリカ海軍においては、儀礼的な目的で星条旗を一時的に降下させる場合でも、国籍旗を降ろすことはありません。これは、国籍旗が国家主権の象徴としての役割を持つためと考えられています。

歴史上の国籍旗「ファースト・ネイビー・ジャック」

アメリカ独立戦争期に用いられていた国籍旗は、「ファースト・ネイビー・ジャック」という名前で知られています。その意匠は、星条旗と同じ赤と白の13本の横縞を背景に、ガラガラヘビが描かれ、その下には「DONT TREAD ON ME」（私を踏みつけるな、つまり我々の自由と権利を侵害するな）というモットーが添えられています。

このファースト・ネイビー・ジャックは、独立戦争終結後一旦姿を消しましたが、1975年から1976年にかけて行われた建国200周年記念祭の際には、期間限定で再び使用されました。さらに、1980年以降は、アメリカ海軍において最も古い現役の艦艇のみが特別に掲揚する慣例が生まれました。

2001年の同時多発テロ事件およびそれに続く対テロ戦争から1年が経過した2002年9月11日には、ファースト・ネイビー・ジャックが改めてアメリカ海軍の正式な国籍旗として復活し、それまで国籍旗として使用されていたユニオン・ジャックは、海洋大気庁（NOAA）などの連邦政府機関が保有する非武装の船艇や、商船旗として使われることになりました。

国籍旗の再度の変更

しかし、この状態は長く続きませんでした。2019年2月21日、当時のアメリカ海軍作戦部長によって、同年6月4日（第二次世界大戦におけるミッドウェー海戦の記念日）をもって国籍旗を再びユニオン・ジャックに戻すことが指示されました。これにより、ファースト・ネイビー・ジャックは、再び海軍で最も古い現役艦艇に限定して掲揚されることとなり、2019年以降は揚陸指揮艦「ブルー・リッジ」がその役割を担っています。

その他の関連する旗

アメリカ合衆国の武装組織には海軍以外にも沿岸警備隊がありますが、沿岸警備隊は厳密には軍の一部でありながら、独自の艦艇旗（軍艦旗に相当するもの）を定めて使用しています。

また、民間においては、ファースト・ネイビー・ジャックと非常に似たデザインを持つ「ガズデン旗」と呼ばれる旗が広く知られています。この旗は、個人の自由や愛国心を示す意図でしばしば掲揚されています。

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