アメリカ連合国の国旗

アメリカ連合国の旗：歴史、デザイン、そして論争

アメリカ連合国（南部連合）は、南北戦争中に存在したアメリカ合衆国から分離した諸州によって構成された国家です。この国家の象徴として、様々な国旗と軍旗が存在しました。これらの旗は、南北戦争終結後も南部の歴史的遺産として認識され、一部の人々には誇りの象徴として扱われていますが、同時に、奴隷制や人種差別の象徴として忌避される存在でもあります。

国旗

最初の国旗：『スターズ・アンド・バーズ』

最初の連合国旗は、1861年3月5日から1863年5月まで使用され、『スターズ・アンド・バーズ』と呼ばれました。この旗は、縦横比3:5で、連邦を離脱した7州（サウスカロライナ、ミシシッピ、フロリダ、アラバマ、ジョージア、ルイジアナ、テキサス）を表す7つの星が特徴でした。デザインは、ドイツ系移民のニコラ・マーシャルによるもので、彼が馴染み深かったオーストリア帝国の国旗に影響を受けています。

しかし、この旗は、アメリカ合衆国の国旗である星条旗と混同されやすいという問題がありました。このため、「敵とそっくりな旗では戦えない」という不満が噴出し、より識別しやすい旗の必要性が高まりました。また、南部連合に加盟する州が増えるにつれて、星の数は13個まで増えました。

二番目の国旗：『ステインレス・バナー』

1863年5月1日、連合国は星条旗との混同を避けるため、国旗を『ステインレス・バナー』に変更しました。縦横比は1:2で、旗の左上部分（カントン）に南軍旗のデザインが組み込まれました。このデザインは、ジョージア州の新聞編集者ウィリアム・T・トンプソンによって考案されました。

『ステインレス』という名前は、旗の大部分を占める白い部分に由来し、「南部人の純粋さ」を象徴すると解釈されました。しかし、トンプソン自身は、この白を「白人の優位性」を象徴するものとしていました。白い部分が広いため、戦場で泥で汚れたり、風がない状態では白旗と見間違えられることもあり、軍人からは批判も出ました。

三番目の国旗：『ブラッド・ステインド・バナー』

1865年3月4日、連合国崩壊の寸前に制定されたのが、『ブラッド・ステインド・バナー』です。これは、二番目の国旗に赤い垂直の条を追加したもので、白旗と誤認されるのを防ぐ目的がありました。縦横比は3:4です。この旗は、アーサー・L・ロジャース少佐によって提案され、白旗との誤認を防ぐだけでなく、南軍旗のX字の十字（セント・アンドリューズ・クロス）をスコットランド国旗に、赤い条をフランス国旗に由来させ、南部のルーツを表現しようとしたものです。

しかし、この旗が制定されて間もなく連合国は崩壊し、実際に使用されることはほとんどありませんでした。

その他の旗

ボニー・ブルー・フラッグ

南北戦争の初期には、『ボニー・ブルー・フラッグ』という青地に白星の旗が非公式の旗として使われました。これは、1810年にスペイン領フロリダで反乱が起きた際に使用された旗で、南部の抵抗の象徴として認識されていました。

南軍旗（バトル・フラッグ）

連合国陸軍の軍旗である『バトル・フラッグ』は、正方形で、部隊によって様々なサイズがありました。この旗は、1861年11月から降伏まで戦闘時に使用され、最初の国旗が星条旗と区別しにくいという問題を解決するために考案されました。バージニア陸軍大将のP・G・T・ボーリガードは、ウィリアム・ポーチャー・マイルズのデザインを採用し、戦場で持ち運びやすいように正方形に修正しました。この旗は、ロバート・E・リー大将率いる北バージニア軍の軍旗としても知られています。

南軍海軍旗（レベル・フラッグ）

南軍海軍旗は、別名『レベル・フラッグ』とも呼ばれ、南軍旗の長方形版であり、縦横比は3:5でした。この旗は、連合海軍の艦船で使用されました。このデザインは、ウィリアム・ポーチャー・マイルズが最初の国旗制定時に提出した案でしたが、採用されず、後に南軍旗のデザインに流用されました。X字型の十字は、聖アンデレ十字と呼ばれることもありますが、マイルズの意図は不明です。現在では、南部の最も有名なシンボルとして認識され、「反逆の旗」とも呼ばれています。

南北戦争後

南北戦争後、「復興」期には、連合に関わる旗の公的な掲示は違法となりました。しかし、地方自治が再建されると、南部の州ではジム・クロウ法が制定されて黒人の権利が奪われ、南軍旗が再び掲げられるようになりました。19世紀末から1920年代にかけての「南部顕彰の時代」には、南軍旗の人気が高まり、「南部の失われた大義」を体現するものとして広まりました。また、南軍兵の顕彰団体が設立され、南軍は奴隷制ではなく州の権利のために戦ったと主張しました。第二次世界大戦中には、南部出身の兵士が南軍旗を非公式のエンブレムとして使用することもありましたが、黒人兵士からの不満の声が高まり、終戦までに使用は激減しました。

論争

南軍旗は、南部の白人にとっては先祖への敬意や地域の誇りを表すシンボルですが、一方で、奴隷制や人種差別の象徴として認識され、その掲示は大きな論争を呼んでいます。1960年代の公民権運動以降、南軍旗は人種問題の焦点となり、クー・クラックス・クランのような白人至上主義団体も使用しているため、そのイメージは悪化しました。

2000年、サウスカロライナ州では、州議会議事堂から南軍旗が撤去されました。2015年には、チャールストンで起きた黒人教会銃撃事件をきっかけに、南軍旗をめぐる議論が再燃し、アラバマ州も州議会議事堂から南軍旗を撤去しました。大手スーパーや通販サイトも南軍旗の取り扱いを中止しました。2020年には、ジョージ・フロイド抗議運動を受けて、モータースポーツ団体のNASCARが南軍旗の使用を禁止しました。

ポップカルチャーにおける南軍旗

南軍旗は、映画やテレビドラマ、ロックバンドの舞台などにも登場しています。例えば、テレビドラマ『爆発！デューク』に登場する車には南軍旗が描かれていました。

州旗への使用

ジョージア州では、1956年に州旗に南軍旗が組み込まれましたが、2001年に新しいデザインに変更されました。ミシシッピ州では、州旗に南軍旗のデザインが含まれていましたが、2020年に新しいデザインに変更されました。他にも、アラバマ州やフロリダ州の州旗のデザインが南軍旗と関連があると指摘されることがあります。

自動車のナンバープレート

一部の州では、南軍旗をあしらった自動車のナンバープレートを申請できますが、これについても議論があります。

このように、南軍旗はアメリカの歴史と文化の中で複雑な位置を占めており、その意味や解釈を巡る議論は、現在も続いています。

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