アヤックス・アカデミー

アヤックス・ユースアカデミー：世界最高の育成機関

アヤックス・ユースアカデミーは、アヤックス・アムステルダムが運営する、プロサッカー選手育成を目的とした組織です。リヌス・ミケルス、ウィール・クーバー、ヨハン・クライフ、ルイ・ファン・ハールといった指導者たちの尽力により、長年にわたる改善が重ねられ、現在の形に至りました。南アフリカにも下部組織を持ち、育成した選手をアヤックスへ引き抜くなど、グローバルな育成ネットワークも特徴です。

アカデミーの卒業生は、FAプレミアリーグやセリエAといった世界のトップリーグへ進出することが多く、「世界への登竜門」とも呼ばれています。K-1で活躍したレミー・ボンヤスキーも、16歳までアヤックスの下部組織に在籍していました。

アヤックスの育成哲学：TIPSモデル

アヤックスは、選手選考において「TIPS」と呼ばれる独自の基準を採用しています。

テクニック (T): ワンタッチプレーやトラップといった基本技術
インテリジェンス (I): 試合の流れを読む洞察力
パーソナリティ (P): 人格、思いやり
スピード (S): 走り出しのタイミング

8歳以上を対象にスカウティングを開始し、外国人選手に対しては、プレースタイル、文化、オランダ語、英語などを習得させるための教育プログラムを提供しています。

セレクションとカテゴリー

セレクションは、オランダ国内に家族と居住する5歳から13歳までの子供を対象に、年2回実施されます。国籍や性別は問わず、誰でもテストを受けることが可能です。毎年3000人から5000人もの応募者の中から、約30人が選ばれます。そして、その中からトップチームへ昇格できるのは、ほんの一握りです。

アカデミーは、U8からU20までの10チームで構成され、ジュニアユース&ユース (F-1, E-3, E-2, E-1, D-3, D-2, D-1, C-3, C-2, C-1, B-2, B-1, A-2, A-1)とリザーブチーム（Jong）に分かれています。アカデミーの目標は、「世界に通用する選手の育成」であり、技術、戦術、身体能力、社会適応力、ルール、健康管理、規律など、多岐にわたる教育が行われます。

教育とルール

アカデミーの教育費は無料で、サッカー用品もクラブから支給されます。選手は自由に生活できますが、高校卒業だけは義務付けられています。ヨハン・クライフは「全員がプロになれるわけではないからこそ、勉強を通じて将来のリスクを避けるべきだ」と語っています。

育成方針：ピラミッドとクーバー・メソッド

アヤックスの育成プログラムの特徴は、組織のピラミッド化とクーバー・メソッドです。ピラミッド化とは、選手の能力に応じて昇格するシステムであり、競争意識を高め、チーム全体のレベルアップに貢献しています。クーバー・メソッドは、ウィール・クーバーが提唱した育成理論で、5歳から15歳までのゴールデンエイジにテクニックを徹底的に指導することで、選手の潜在能力を引き出すことを目指します。

トレーニングプログラム

年齢に応じた段階的なトレーニングを通じて、サッカーの基本であるTIPSを習得していきます。

5-7歳 (F-1): パス、スピード、ドリブル精度、シュート、フェイントなど、「T」を重点的に指導し、ボールとの触れ合いを深めます。
7-12歳 (E-3, E-2, E-1): 簡単な試合を通じて基本的な技術「T」と洞察力「I」を向上させ、コミュニケーション能力や協調性を養います。
12-16歳 (D-3, D-2, D-1, C-3, C-2, C-1): TIPSをバランスよく指導し、ライン・ポジションごとの役割、チームワークを学び、インナーマッスルを鍛えます。
16-20歳 (B-2, B-1, A-2, A-1): チーム戦術を学び、個人技術、フィジカル、チーム力の強化を目指します。専属のボクシングトレーナーによる指導も行われます。
* トップチーム (Jong): セットプレー、スタミナ強化、サッカーエアロビクスなどを取り入れ、フィジカル強化に重点を置きます。

トレーニング内容と施設

アヤックスの練習メニューは、コー・アドリアーンセ、トニー・ブラインス・スロット、アンヘル・ビルダといった名コーチたちが考案したと言われています。練習施設「トゥーコムスト」(De Toekomst)は未来という意味で、21面のコートのうちトップチームが使用できるのは1面のみで、残りはアカデミーや一般市民に開放されています。

システムと戦術

ユースチームから一貫して同じシステムで練習を行っており、伝統的なスリートップのフォーメーションを基本としています。戦術はプレッシングサッカーとポゼッションフットボールを組み合わせたもので、「アヤックススタイル」と呼ばれています。

フィジカルトレーニング

100mのタイムよりも5m・10mのタイムを重視し、シャトルランなどで強化を図ります。また、柔道を取り入れることで、強靭なフィジカルを養成します。体幹を意識したランニングも重視されています。

テクニック

パス練習では6×4やロンド、トライアングルなどのトレーニングを行います。ドリブルは、ボールを追い抜くぐらいの気持ちで練習することが推奨されています。円形ドリブルやドリブル鬼ごっこなども、ジュニアユースの練習に取り入れられています。

クライフの哲学

ヨハン・クライフは、育成と戦術に関して数々の哲学を残しました。幼少期のフィジカルトレーニングは厳禁、テクニックは幼少期に習得させるべき、幼少期の先生はボールである、子供の感性を縛ってはいけない、一流の選手は人間として一流であるべき、といった思想は、アヤックスの育成プログラムの根幹をなしています。

スタッフ

（2017-18シーズンのスタッフ一覧は省略）

アヤックス・ユースアカデミーは、常に革新的な育成プログラムを追求し、世界最高の選手育成機関として、サッカー界に多大な影響を与え続けています。

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