アライド・アイリッシュ銀行

アライド・アイリッシュ銀行（AIB）: アイルランドを代表する金融機関の興亡と課題

アライド・アイリッシュ銀行（Allied Irish Banks plc、以下AIB）は、アイルランド最大の支店ネットワークを誇る主要商業銀行です。アイルランドにおける四大行の一つに数えられ、個人向けにはローンの提供、クレジットカード、住宅ローンといった幅広い金融サービス、そして生命保険や年金商品も提供しています。法人向けサービスも充実しており、国際的な銀行業務や財務業務も担っています。AIBは、英国やポーランドにも子会社を持ち、アメリカ合衆国の大手銀行であるM&Tバンクにも出資するなど、グローバルな展開を見せています。また、アイルランド独自のデビットカードシステムであるLaserにも対応しています。

AIBの歴史：合併から国際的銀行へと発展

AIBは、1966年にProvincial Bank、Royal Bank of Ireland、Munster & Leinster Bankの3行が合併して設立されました。これら3行はそれぞれアイルランドの銀行史において重要な役割を果たした銀行であり、その合併はアイルランドの銀行業界の再編を象徴する出来事でした。

設立以降、AIBは積極的に国際展開を進めてきました。1970年代には英国に支店を設立し、1980年代にはアメリカ合衆国への投資を開始しました。アメリカ合衆国での事業展開では、Maryland Bancorpへの出資やFirst Maryland Bancorpとの合併を経て、Allfirst Bankを設立しましたが、後にM&T Bank Corporationに売却しています。現在もM&T Bankに22.5%の出資を保有しています。

さらに、AIBは1990年代にはポーランドのBank Zachodni WBKの株式を取得し、ポーランド市場への進出を果たしています。北アイルランドのTSB Northern Irelandを吸収合併し、First Trust Bankを設立するなど、アイルランド国外での事業展開にも積極的でした。

2008年の金融危機と国有化

2008年の世界金融危機は、AIBに大きな打撃を与えました。アイルランド不動産バブルの崩壊により、AIBは多額の不良債権を抱え込むこととなり、流動性危機に直面しました。アイルランド政府は、AIBの救済に乗り出し、国有化という道を選びました。政府による資本注入や支援策にもかかわらず、AIBは大きな損失を計上し、経営再建には長い時間を要しました。2010年にはアイルランド政府がAIBの大株主となり、事実上国有化されました。

再民営化と新たな課題

その後、AIBは経営再建を進め、2017年にはアイルランド証券取引所とロンドン証券取引所に再上場を果たしました。政府による株式売却も進められ、2024年6月現在では政府の保有比率は25％に減少しています。しかし、金融危機以降も、AIBは様々な問題を抱えています。

AIBを取り巻く論争

AIBは、その歴史の中で様々な論争やスキャンダルに巻き込まれてきました。

ジョン・ルスナックによる巨額損失: Allfirstのトレーダーによる巨額な為替取引損失事件は、アイルランドにおける最大規模の銀行スキャンダルの一つとして記憶されています。
脱税問題: 預金利子保持税（DIRT）に関する脱税問題や、投資会社ファルドー・リミテッドへの投資に関する問題など、税金に関する疑惑も浮上しました。
FX手数料過大請求問題: 外国為替取引における手数料過大請求問題も明らかになり、多額の返還金を支払うことになりました。
取引の割り当てと関連する問題: 投資の割り当てに関する不適切な慣行が発覚しました。
* キャッシュレス化問題: 2022年の70支店のキャッシュレス化計画は、地方社会からの反発を受け撤回されました。

これらの論争は、AIBの企業ガバナンスやリスク管理体制に深刻な疑問を投げかけています。AIBは、これらの過去の過ちから学び、健全な経営体制を確立し、信頼回復に努める必要があるでしょう。

今後の展望

AIBは、アイルランド経済における重要な役割を担う銀行です。しかし、その歴史には、数々の課題や困難が刻まれています。AIBが今後、持続的な成長と発展を遂げるためには、透明性と説明責任を重視した経営体制の構築、リスク管理の強化、顧客との信頼関係の回復など、多くの課題を克服していく必要があります。アイルランドの経済発展に貢献していくためには、これらの課題への対応が不可欠です。

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