アラビアンドリーム シェラザード

アラビアンドリーム シェラザード

『アラビアンドリーム シェラザード』は、1987年9月3日にカルチャーブレーンからリリースされたアクションRPGです。北米では『The Magic of Scheherazade』のタイトルで1989年12月に発売されました。

本作は、アラビアの神秘的な世界観を舞台にした、カルチャーブレーンとしては初のアクションRPG作品です。その斬新な設定は当時注目を集めました。また、スーパーファミコン向けに続編が企画され、多くのファンが期待を寄せていましたが、残念ながら開発中止となり、日の目を見ることはありませんでした。

ストーリー

物語は、平和なアラビアが邪悪な魔道士サバランによって危機に瀕するところから始まります。サバランは大魔神ゴルゴラの封印を解き放ち、世界を魔物で覆い尽くしてしまいます。この危機に立ち向かおうとしたシェラザード姫は、サバランによってどこかへと連れ去られてしまいます。

伝説の魔法使いイスファの生まれ変わりと謳われる若き魔法使い（プレイヤーキャラクター）は、愛するシェラザード姫を救うためサバランに挑みますが、力の差は歴然。敗北した主人公は時空の彼方へ飛ばされ、記憶と魔力の両方を失ってしまいます。プレイヤーは、記憶と力を取り戻しながら、時空を超えてアラビア世界を駆け巡り、サバランを打ち倒して姫を救い出すための壮大な冒険に旅立ちます。

ゲームシステム

ゲームは、主にフィールドやダンジョンを探索するアクションモードと、特定の場面で発生する魔法合戦という二つの異なるシステムで進行します。全5つのワールドで構成されており、各ワールドの目標は、行方不明の仲間と囚われた姫を見つけ出し、最後に「パレス」に待ち受けるボスキャラクターを倒すことです。

ワールド内には過去や未来へと繋がる「時空の扉」が存在し、「マジカルボイス」というアイテムを使うことで時代を移動できます。現代とは異なる時代の風景や強力な敵、そして冒険に不可欠な仲間やアイテムがプレイヤーを待ち受けています。

本作はアクションRPGとしては珍しく残機数が設定されており、HPがゼロになったり、アクションモード中に水に落ちたりすると残機が減少します。特定の状況下では残機に関わらずゲームオーバーになることもあります。ゲームのセーブはパスワード方式で、ゲームオーバー時に表示されるパスワードを記録する必要があります（破産によるゲームオーバーを除く）。

主人公の能力はレベルアップによって向上しますが、経験値を貯めるだけではレベルは上がりません。各ワールドのダンジョンに囚われている姫を発見することがレベルアップの条件となります。レベルが上がると使用できる魔法や装備が増え、冒険の幅が広がります。

また、ゲーム開始時やモスクで選択できる称号システムも特徴的です。戦士、聖者、魔法使いのいずれかを選ぶことができ、称号によってアクションモードでの戦闘能力が変化したり、特定のイベントが発生したりします。

アクションモードと戦闘

アクションモードはゲームの根幹を成すシステムで、フィールドやダンジョンを固定画面方式で探索します。プレイヤーはスタートボタンでポーズ中に、A/Bボタンに「話す」「剣」「杖」などの行動を割り当て、状況に応じて切り替えながら進みます。何も割り当てていない場合はジャンプが可能です。

戦闘は画面切り替え時にランダムで発生します。アクションモード中の戦闘は主に剣や杖による攻撃で行われます。ゲームが進むとアイテムや魔法、仲間の能力も駆使できるようになります。敵を倒すと経験値や通貨であるルピア、稀に回復アイテムやお守りを手に入れられます。一部の敵は影に覆われており、特定の魔法で正体を暴かなければダメージを与えられません。特定の場所に固定出現する「魔法使い」は特に強力で、手下を伴い、特殊な弾で主人公を変身させて無力化させてきます。変身状態では手下の攻撃で即死の危険があり、撃破には戦略が必要です。

魔法合戦

特定の場面では、画面切り替え時に魔法合戦と呼ばれるRPG風の戦闘に移行することがあります。ここでは敵と「戦う」か、ルピアを支払って「和平を申し込む」かを選択できます。

魔法合戦では、主人公と2人の仲間、そして最大4人の傭兵が参加できます。主人公の能力はレベルに依存しますが、仲間と傭兵の能力は固定です。特定の仲間が揃っていると陣形を組むことができ、強力な合体魔法を使用可能になります。敵の組み合わせ（戦隊）によって有効な陣形や合体魔法が存在し、戦略的な選択が勝利の鍵を握ります。陣形や魔法についての知識は、街の魔法大学で学ぶことができます。

施設とシステム

アラビア世界には様々な施設が存在し、冒険をサポートします。

お店: アイテムの売買が可能。借金システムがあり、返済しないとゲームオーバーになることも。商品には値切り交渉もできますが、失敗すると怒られます。
宿屋: 宿泊してHPとMPを回復できます。
魔法大学: 魔法合戦の陣形や魔法について学べます。卒業試験に合格すると貴重なアイテムを入手できることもあります。
傭兵所: ルピアを支払って傭兵を雇えます。魔法合戦で共に戦ってくれますが、一度倒されると復活しません。
モスク: 称号の変更や、倒れてしまった仲間の蘇生ができます。
カジノ: ルーレットで遊べます。特定の条件下（聖者称号など）では利用できませんが、アララート日食中は条件が変化します。
* 問答: ダンジョンの特定の部屋で合言葉を問われ、正解すると「大魔法」を習得できます。質問に失敗するとゲームオーバーになる厳しい場面もあります。

各ワールドの特定の場所には、主人公の冒険を助けてくれる個性豊かな仲間たちが待っています。彼らはストーリー進行や特定の条件（支払い、質問への正答など）を満たすことで仲間に加わります。仲間探しと姫の救出は、ワールドクリアの必須条件となっています。

特徴的なアイテムと魔法

冒険には様々なアイテムや魔法が役立ちます。ルピアは通貨、ゴトラトのパンやマシュルーブは回復アイテムです。時空の扉を開くマジカルボイス、パレスの鍵を開けるシクラスの鍵、強力な敵「魔法使い」による変身を解くおまもりなどがあります。アララート日食という特殊な時間帯には、消費アイテムやルピアを満たすエロヒムーン、砂漠や冬の森を一時的に変化させるアメキムーンやソレイムーン、モスクへワープするランデムーン、倒れた仲間を全員蘇生させるマミムーンといった大魔法が使用可能になります。

日本版と北米版の違い

北米版『The Magic of Scheherazade』は、日本版からいくつかの変更が加えられています。BGMの多くが差し替えられ、全体的な難易度が緩和されています。例えば、フィールドマップがほぼ一本道になったり、レベルアップに姫の救出が不要になったり、問答の失敗で即ゲームオーバーにならずにやり直しが可能になったりしています。仲間加入の条件が緩和され、傭兵が主人公と共にレベルアップするなど、より遊びやすいバランス調整が施されています。また、主人公を含むキャラクターのビジュアルも、当時の日本ファミコン作品の傾向に合わせたデザインに変更されています。

評価

ゲーム誌『ファミコン通信』のクロスレビューでは40点満点中27点、『ファミリーコンピュータMagazine』の読者投票では30点満点中19.56点という評価を得ています。同誌のカタログでは「マップが1500画面以上あり、敵キャラは約100、アイテム約50、ゲームの進行上必要な情報が約300。とにかくスケールがでかいゲームだ」と紹介されており、その広大な世界とボリュームが評価されていました。

独自のシステムとアラビアンナイト風の世界観が融合した本作は、カルチャーブレーンのアクションRPGの原点として記憶されています。

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