アリヨール (病院船)

アリヨールの歴史

アリヨールは、1889年にイギリスのホーソン・レスリー社によって建造されたロシアの義勇艦隊に属する鋼製汽船です。この船は、総トン数4528トン、長さ131.7メートル、幅4.6メートル、深さ3メートルというサイズを有し、三連成汽機を搭載しており、最高速度は19ノットに達しました。アリヨールはオデッサとウラジオストクの間を結ぶ定期船として運行され、多くの貨物や乗客を運ぶ役割を果たしていました。

日露戦争と改装

ところが、日露戦争が勃発すると、アリヨールの運命は大きく変わります。戦争の状況に応じ、彼女は病院船へと改装され、バルチック艦隊と共に極東へ向かうことになりました。1905年5月27日、アリヨールは五島列島の西方沖で、日本の仮装巡洋艦「信濃丸」に目撃されました。この事件はアリヨールの運行に新たな影を落とすことになります。

この日、「信濃丸」はロシア艦隊と遭遇し、敵艦の発見を報告しました。同じくその日、アリヨールは日本のもう一隻の仮装巡洋艦「佐渡丸」による臨検を受けた際、ロシア軍が拿捕したイギリスの船「オールドハミヤ」の船長らが乗船していたため、アリヨールも拿捕されてしまいました。

その後、気運が変わり、アリヨールは「楠保丸」という名前に改められました。新しい名前で再出発した楠保丸は、呉で病院船としての役割を果たしましたが、平時にはその維持費が問題となりました。

民間への貸出

日本海軍は、同じく元義勇艦隊に属していた「笠戸丸」と共に、楠保丸を民間へと貸し出す決定を下しました。東洋汽船との交渉では、楠保丸の使用料が500円強、笠戸丸が4200円強であると提示されました。しかし、海軍からは両船の維持が命じられることがあり、これによって経済的な負担は解消されませんでした。

ハワイへの航海とその後

楠保丸はその後、ハワイへと航海しました。しかし、航海中に石炭の消費量が非常に多く、貨物積載量が少なかったため、経済的には採算が合わない船となってしまいました。そのため、楠保丸は早期に返還され、解体の運命をたどることとなります。

このように、アリヨール（後の楠保丸）は波乱に満ちた歴史を持つ船でしたが、運命の交差点で多くの出来事が絡み合った結果、長い航海の後に解体されてしまいました。彼女の物語は、当時の歴史の一部として語られ続けることでしょう。

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