アルケミー (イングヴェイ・マルムスティーンのアルバム)

『アルケミー』（Alchemy）

『アルケミー』（Alchemy）は、スウェーデン出身の卓越したギタリスト、イングヴェイ・マルムスティーンによって1999年に発表された通算12作目にあたるスタジオ録音盤です。このアルバムは、彼の長いキャリアの中でも特に重要な位置を占める作品の一つとして認識されています。

発売名義とバンドの再動

本作は「イングヴェイ・J・マルムスティーンズ・ライジング・フォース」という名義でリリースされました。これは、1988年に発表された4作目のアルバム『オデッセイ』以来、実に11年ぶりとなる「ライジング・フォース」名義でのスタジオ作品でした。この間、イングヴェイはソロ名義や他のメンバーとのプロジェクトを展開していましたが、かつての看板ともいえるバンド名を冠して新作をリリースしたことは、ファンやメディアから大きな注目を集めました。これは、単なる名義の復活に留まらず、バンドとしての結束やサウンドへの新たなアプローチを示唆するものでした。

ヴォーカリスト、マーク・ボールズの復帰

本作で特筆すべきは、ヴォーカリストとしてマーク・ボールズが全面参加していることです。マーク・ボールズは、1986年に発表された彼の代表作の一つ『トリロジー』に参加しており、その力強い歌声でアルバムの成功に貢献しました。本作での全面参加は、それから13年ぶりとなり、イングヴェイとマーク・ボールズという黄金期の組み合わせが再び実現した形です。彼の表現力豊かな歌声は、イングヴェイの高度なギタープレイと見事に調和し、アルバム全体に深みと躍動感を与えています。この組み合わせの復活は、多くのファンに待ち望まれていました。

音楽性と評価

『アルケミー』の音楽性は、イングヴェイのトレードマークであるネオ・クラシカル・メタルを基軸としています。クラシック音楽にインスパイアされたメロディー、驚異的な速さで繰り出されるギターソロ、そして壮大なアレンジメントが特徴です。日本盤の帯には「「ライジング・フォース」復活!! 王者、2年ぶりの新作は、他者の追随を許さない孤高のネオ・クラシカル・ギター・アルバム!」という解説が寄せられており、このアルバムがリリース当時のイングヴェイの地位と音楽性を端的に表しています。本作は、イングヴェイが自身の確立したスタイルをさらに深化させ、技巧と芸術性を両立させた作品として評価されています。約2年ぶりの新作として発表された当時、イングヴェイの衰えを知らない創造性と演奏能力が改めて示されました。

参加ミュージシャン

本作の制作には、以下の優れたミュージシャンたちが参加しました。

イングヴェイ・マルムスティーン: ギター、ギター・シンセサイザー、ベース（楽曲 #8を除く全て）、ムーグ・タウラス・ペダル、シタール、ヴォーカル
マーク・ボールズ: ヴォーカル
マッツ・オラウソン: キーボード、バッキング・ヴォーカル
バリー・ダナウェイ: ベース（楽曲 #8を除く全て）、バッキング・ヴォーカル
ジョン・マカルーゾ: ドラム

イングヴェイ自身が多岐にわたる楽器を担当している点は注目に値します。特にベースのほとんどを自身で演奏していること、そしてシタールやムーグ・タウラス・ペダルといった珍しい楽器も使用していることから、サウンドプロダクションにおける彼の強い意志と多才さが伺えます。マーク・ボールズの全面的なヴォーカル、マッツ・オラウソンのキーボードワーク、バリー・ダナウェイとジョン・マカルーゾによる安定したリズムセクションが一体となり、アルバム全体のサウンドを構築しています。

関連するライブ・映像作品

『アルケミー』に収録されている一部の楽曲は、その後のイングヴェイのライブパフォーマンスや映像作品にも登場しています。

教則ビデオシリーズ「イングヴェイ奏法 究極編-PLAY LOUD!-〔FULL-SHRED〕」には、「Blitzkrieg」、「Leonardo」、「Blue」といった楽曲が、イングヴェイによるデモンストレーションとして収録されています。これらの映像を通じて、ファンはアルバムで聴ける驚異的なギタープレイがどのように演奏されているのかを視覚的に学ぶことができます。
楽曲「Hangar 18, Area 51」は、プロモーション用のビデオ・クリップとして制作され、アルバムの世界観を映像でも表現しました。
ライブ作品「スペルバウンド・ライヴ・イン・タンパ」においても、これらの楽曲が演奏された記録があります（入力情報からの直接的な詳細確認はできないものの、関連情報として示されています）。

『アルケミー』は、イングヴェイ・マルムスティーンが、バンド名義の復活とヴォーカリストとの再会を経て、自身の音楽性を改めて確立・提示した重要な作品です。ネオ・クラシカル・メタルの旗手としての彼の地位を不動のものとする上で、欠かせないアルバムと言えるでしょう。

もう一度検索