アルド・サンブレル

アルフレド・サンチェス・ブレルとして知られるアルド・サンブレル（Aldo Sambrell）は、1931年2月23日に生まれ、2010年 7月10日に没したスペインの映画人です。俳優として特に有名ですが、監督や脚本家、プロデューサーとしても活動しました。1961年から1996年にかけて、150本を超える映画やテレビ作品に出演する多作なキャリアを築きました。

彼の名前は、出演作品や公開された国によって非常に多くの表記揺れがあります。クレジット名義としては、Aldo Sambrell、Aldo Sambrel、Aldo Sanbrell、Aldo Sanbrel、Ald Sanbrell、Al Sambrell、Aldo Sambell、Harold Sambrel、Aldo Brell、Joe Sambrellなどが見られます。さらに、『ダイナマイト・ジム』(1965)の英語版ではAlbo Sanbrell、ジャッキー・チェン監督の『プロジェクト・イーグル』ではAlfredo Brel Sanchezと表記されました。日本の媒体では、アルド・サムブレルやサム・ブレルといった表記も存在し、一部のビデオソフトではアルド・サンブレイと記された例もあります。自身が監督を務める際には、アルフレード・S・ブレル（Alfredo S.Brell）やアルド・S・ブレル（Aldo S.Brell）という名義を使用しました。

キャリアの軌跡

俳優になる前はサッカー選手としてメキシコでプレーし、その後は歌手を目指していたという異色の経歴を持っています。映画界への第一歩は、1961年のニコラス・レイ監督作品『キング・オブ・キングス』での端役でした。この作品は、スペイン国内でロケが行われたハリウッド大作であり、彼のキャリアの原点となりました。本格的に俳優としての道を歩み始めたのは、1960年代初頭のマカロニ・ウエスタン作品への出演が増えてからです。

『墓標には墓標を』(1962)や『赤い砂の決闘』(1963)といった作品でマカロニ・ウエスタンの世界に入り込み、やがてスペインで撮影される機会の多かったハリウッド西部劇、『カサグランデのガンファイター』(1964)や『最後のガンファイター』(1965)などにも顔を出すようになりました。スペインは当時のイタリア製西部劇やアメリカとの合作映画の主要なロケ地であり、サンブレルはこうした環境で多くの経験を積んでいきました。

マカロニ・ウエスタンの顔としての確立

彼の最も印象的な役柄の一つが、マカロニ・ウエスタンにおけるメキシコ系の悪役です。セルジオ・レオーネ監督の古典的作品、『荒野の用心棒』（1964）や『夕陽のガンマン』（1965）では、主人公を苦しめるギャングの一員として登場しました。特に、セルジオ・コルブッチ監督の『さすらいのガンマン』(1966)では、凶悪な盗賊団の首領ダンカン役に抜擢され、その強烈な演技で広く注目を集めました。この成功は、スペインで撮影された米国のテレビシリーズ『ラット・パトロール』へのゲスト出演や、ハリウッド西部劇大作『100挺のライフル』(1967)への出演に繋がります。『さすらいのガンマン』と『100挺のライフル』では、後にハリウッドの大スターとなるバート・レイノルズと共演しています。悪役俳優としての評価を確立した彼は、その後も数多くの作品に引っ張りだこになり、スティーヴ・リーヴスの引退作『地獄の一匹狼』（1967）にもクレジットなしで出演しています。

国際的なバイプレーヤーとして

マカロニ・ウエスタンでの活動を続けつつ、彼は活躍の場を広げていきました。ルイス・ブニュエル監督の芸術的な作品『哀しみのトリスターナ』（1970）のようなスペイン映画にも端役ながら出演し、演技の幅を示しました。さらに、国際的な大作映画にも次々と出演するようになります。出演作品は、『コンドルの砦』(1970)、『ラスト・ラン/殺しの一匹狼』(1971)、『シンドバッド/黄金の航海』(1973)、『風とライオン』(1975)など多岐にわたります。これらの作品では、ショーン・コネリー、ジョージ・C・スコット、チャールズ・ブロンソン、チャールトン・ヘストン、ラクエル・ウェルチといった当時の大スターたちや、デーヴィッド・リーン、マーク・ロブソン、ジョン・ギラーミン、リチャード・フライシャー、ジョン・ミリアス、ジョージ・キューカーといった名だたる監督たちと共に仕事をしました。同時代のスペインには顔は知られていても国際的な知名度が低い脇役俳優が多くいましたが、サンブレルは比較的多くの国際的な機会に恵まれた存在と言えるでしょう。

後期の活動と遺産

1980年代に入っても、サンブレルは俳優として精力的に活動を続けました。この時期の出演作の多くは日本では未公開でしたが、一部はビデオソフトとして紹介されました。『アマゾネス・プリズン』（1989年）や、日本でも劇場公開されたジャッキー・チェン監督・主演の『プロジェクト・イーグル』(1991年)などがあります。また、ドルフ・ラングレン主演の米国・スペイン合作『メン・オブ・ウォー』（1994年）では、珍しくタイで撮影されたパートにも出演しています。マイケル・パレ主演の『ザ・ジャスティス/復讐の銃弾』（1986年）のような英国領ジブラルタル映画にも脇役で参加しており、この作品は資料によってはブラジル映画と誤記されることもありました。

アルド・サンブレルは、マカロニ・ウエスタン時代の悪役として特に記憶されていますが、そのキャリアはそれにとどまらず、多種多様なジャンルと国際的な環境で活動した俳優でした。数多くの名義を使い分け、常に映画製作の現場に立ち続けた彼の存在は、スペイン映画史、そして国際的な娯楽映画史において重要な一ページを飾っています。

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