アルナック＝ポンパドゥール

フランス南西部、ヌーヴェル＝アキテーヌ地域圏のコレーズ県に位置するコミューンが、アルナック＝ポンパドゥールです。この地名は、18世紀フランスを彩ったルイ15世の著名な愛妾、ポンパドゥール夫人の名に由来し、彼女にポンパドゥール城と侯爵夫人の称号が与えられたことから世界的に知られるようになりました。

地域内や道路標識では、単に「ポンパドゥール」と略称されることもありますが、かつてのポンパドゥール集落は現在、アルナック＝ポンパドゥールと隣接するサン・ソルナン・ルヴォルプの二つのコミューンに分かれています。現代においては、特にウマや競馬の世界との結びつきが強いことで知られています。

アルナックの地には、遠くガロ＝ローマ時代から人々が定住していた痕跡が見られます。町の象徴でもあるポンパドゥール城は、1026年にポンパドゥール子爵兼ラストゥール領主によって築かれました。ポンパドゥール子爵家は、15世紀に強力なコンボルン子爵領を相続したことでその勢力を大きく拡大させ、後に侯爵へと昇格しました。しかし、18世紀初頭に家系が断絶すると、城や広大な領地、そして称号の相続を巡って、コンティ公ルイ・フランソワとラ・ヴァリエール侯爵の間で激しい法廷闘争が巻き起こります。結局、どちらの claimant も権利を得ることはできず、ルイ15世がこの機に乗じて城を王領に組み込んでしまいました。

1745年、王は自身のお気に入りの女性であったエティオール夫人に対し、この由緒あるポンパドゥール侯爵夫人の称号を与えました。ポンパドゥール夫人は、彼女自身の死の数年前にあたる1760年、王家の所有となっていたポンパドゥール城を改めて分離させました。さらに、1751年に夫人が個人的に設立した種馬の飼育施設を基盤として、1761年にはルイ15世によって王立種馬飼育場が正式に創設されました。この王立種馬飼育場はフランス革命勃発まで大いに栄えました。

アンシャン・レジームの崩壊に伴い、一度は閉鎖された種馬飼育場ですが、1795年には総裁政府によって再建され、1872年からは国立種馬飼育場として、現在に至るまでフランスの馬事文化を支える重要な役割を担っています。革命時代には、一時的にコミューン名が「アルナック・ラ・プレリー」（Arnac-la-Prairie）と変更された時期もありました。

現在のアルナック＝ポンパドゥールは、その歴史を物語る史跡と、ウマに関連するレジャー施設が主な見どころです。中心となるのは、1926年にフランス歴史文化財に指定されたポンパドゥール城です。この城は、ポンパドゥール夫人の名を不朽のものとした場所であり、その歴史的な重厚さを今に伝えています。城の周辺には、臨場感あふれる競馬が楽しめるポンパドゥール競馬場や、フランスにおける馬の改良と普及の中心である国立ポンパドゥール種馬飼育場があり、多くの馬愛好家や観光客が訪れます。また、リゾート施設であるクラブ・メッドもこの地に立地しており、多様な楽しみ方が可能です。アルナック＝ポンパドゥールは、優雅な歴史と活気ある現代の馬事文化が見事に融合した、魅力的な場所と言えるでしょう。

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