アルバニア決議

アルバニア決議：中国代表権問題と国際社会の変容

1971年10月25日、国際連合総会において採択された2758号決議、通称「アルバニア決議」は、20世紀後半の国際政治における重要な転換点となりました。この決議は、長年にわたる国連における「中国代表権問題」に終止符を打ち、中華人民共和国（中国）の国連加盟と中華民国（台湾）の国連脱退という歴史的変化をもたらしました。

中国代表権問題の経緯

第二次世界大戦後、中国大陸を支配していた中華民国は国連安保理常任理事国として認められていました。しかし、国共内戦での敗北後、中華民国は台湾に拠点を移し、中国大陸を実効支配する中華人民共和国が建国しました。両者は中国の正統政府の座を巡って対立し、国連における代表権を巡る争いは長期化しました。

中華人民共和国は1949年から国連における中華民国の追放を訴え続けましたが、アメリカ合衆国の支援を受けた中華民国は、その地位を維持していました。1960年代には、アルバニアなどから中華民国の追放を求める提案が複数回ありましたが、いずれも否決されています。

しかし、ベトナム戦争の泥沼化により、アメリカは中国との関係改善を必要とするようになりました。この状況変化が、中国代表権問題の進展に大きな影響を与えます。

アルバニア決議の採択

1971年、アルバニア、アルジェリアなど23ヶ国が共同提案した決議案が提出されました。この決議案は、中華人民共和国政府の代表権を回復し、中華民国政府を追放するものでした。

アメリカは、中華民国の国連議席維持を模索しましたが、アルバニア決議案は賛成76、反対35、棄権17、欠席3で可決されました。これにより、中華民国は国連安保理常任理事国の地位を失い、国連から脱退しました。

各国の対応

この決議に対して、各国の反応は様々でした。

日本: 佐藤栄作内閣は中華人民共和国の国連加盟に賛成するものの、中華民国の追放には反対する立場を表明。二重代表制決議案などを提案しましたが、アルバニア決議の採択により、日中関係は新たな局面を迎えることになります。
アメリカ: ニクソン政権は、中華人民共和国との関係正常化を図るため、キッシンジャーによる極秘訪中を行い、ニクソン大統領の訪中へとつながりました。
* ヨーロッパ: 冷戦下にあったヨーロッパ諸国の大半はアルバニア決議に賛成しました。

中華民国への影響とその後

アルバニア決議は、中華民国にとって大きな打撃となりました。国際社会で孤立を深めることになり、台湾における国民の失望と怒りも大きかったでしょう。その後、中華民国は国連への復帰を繰り返し訴えてきましたが、中華人民共和国の強い反対により、実現しませんでした。

中華人民共和国への影響とその後

一方、中華人民共和国は国連安保理常任理事国となり、国際社会における地位を飛躍的に向上させました。しかし、台湾問題については、「一つの中国」の原則を堅持し、台湾独立への動きには強い警戒感を示し続けています。

アルバニアとその後の状況

アルバニアは中華人民共和国と友好関係を築いていましたが、中国の国際的影響力の拡大や中ソ・米中関係の変動に直面する中で、経済的に苦境に陥ることとなりました。

まとめ

アルバニア決議は、冷戦構造下における国際政治の大きな変化を示す出来事でした。この決議は、中国代表権問題という長年の紛争に決着をつけただけでなく、米中関係の改善、日中関係の正常化、そして台湾問題の長期化など、現在まで続く国際情勢に多大な影響を与えました。この出来事を理解することは、現代の国際関係を理解する上で不可欠です。

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