アルフレッド・アガッシュ (画家)

アルフレッド・アガッシュ（Alfred Pierre Joseph Agache、1843年8月29日 - 1915年9月3日）は、19世紀後半から20世紀初頭にかけて活動したフランスの画家です。彼は主に女性をモデルにした人物画を描き、その繊細な筆致と色彩感覚で評価されました。同名の建築家、アルフレッド・アガッシュ（1875-1959）は彼の甥にあたります。

生涯

アルフレッド・アガッシュは、ベルギーとの国境に近いリールで生まれました。父親は紡績業を営む実業家でした。アガッシュの生涯については詳細な記録は多く残されていませんが、リールの美術学校（École des beaux-arts de Lille）でアンリ＝ウジェーヌ・プルシャール（Henri-Eugène Pluchart: 1835-1898）やアルフォンス・コラ（1818-1887）に師事し、絵画の基礎を学びました。

1872年から1874年にかけて、アガッシュは1年を超える長期の海外旅行に出かけました。この旅行で、彼はエジプト、インド、そして日本を訪れ、異文化に触れました。これらの国々での経験は、彼自身の芸術観や作風に大きな影響を与えたと考えられています。特に東洋の美術や文化に対する関心は、後の作品にも表れています。

帰国後、アガッシュはパリの展覧会に積極的に作品を出品しました。彼はフランス芸術家協会の会員にもなり、1885年のパリのサロンでは3等のメダルを受賞しました。この頃、彼はアメリカ人画家のジェームズ・マクニール・ホイッスラー（1834-1903）と交流があった可能性があり、また、画家のエメ・モロー（1850-1913）からも作品を賞賛されています。1893年のシカゴ万国博覧会では金メダルを受賞し、国際的にもその名を知られるようになりました。

1901年から1905年まで、アガッシュはフランス国民美術協会の役員を務め、美術界での影響力を高めました。また、1894年から1895年の間には、故郷リールの美術館で学芸員主任の職務も担いました。1899年にはレジオンドヌール勲章（シュバリエ）、1910年にはレジオンドヌール勲章（オフィシエ）を受章し、その功績が認められました。

アルフレッド・アガッシュは、1915年にウール＝エ＝ロワール県のクール・シュル・ロワールで亡くなりました。彼の兄弟には、父の繊維事業を発展させた実業家エドゥアール・アガシュ（Édouard Agache-Kuhlmann: 1841-1923）と、建築家アルフレッド・アガッシュ（1875-1959）の父であるオーギュストがいます。

作品

アガッシュの作品は、繊細な筆遣いと、独特な色彩感覚が特徴です。特に、女性のポートレートは、優美で洗練された表現が際立っています。エジプト、インド、日本への旅行経験から得た異文化の要素も、作品の随所に見られます。彼の作品は、パリのサロンを中心に数多く展示され、その高い芸術性で多くの人々を魅了しました。

参考文献

Jules Martin (sous la dir.), Nos peintres et sculpteurs, graveurs, dessinateurs, Flammarion, 1897, p. 11.
Imperia, lithographie publiée dans L'Estampe moderne, vol. III, Paris, 1899.
* Eusébia Garit, Alfred Agache (1843-1915) : un langage symbolique en marge du symbolisme (thèse de doctorat en Histoire de l'art), Université de Lille III - Charles de Gaulle, 2010 (SUDOC 149275234).

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