アルフレッド・ストーン

アルフレッド・ラッセル・ストーン

アルフレッド・ラッセル・ストーン（Alfred Russell Stone、1902-1954）は、カナダが生んだ敬虔なメソジスト派の宣教師であり、日本のキリスト教界、特に農村伝道の分野に大きな足跡を残しました。彼の生涯は、献身的な奉仕と深い人間愛に彩られていましたが、その最期は、1954年に発生した洞爺丸事故の悲劇の中で、自身の命よりも他者を優先する行動によって広く知られることとなりました。

生涯と来日

1902年4月29日、カナダのオンタリオ州ハイゲート村に生まれたストーンは、トロント大学で学びを深めた後、1926年9月19日にカナダ合同教会の宣教師として日本の土を踏みました。最初の任地は東京で、青山学院の宣教師館に居を構え、本郷中央会堂（現在の日本基督教団本郷中央教会）で聖書研究の指導に携わりました。その後、長野や富山でも宣教師としての務めを果たしました。

結婚と多岐にわたる活動

1931年に一時カナダへ帰国した際、ストーンは婦人宣教師のジーン・ギレスビーと結ばれました。この滞在中、彼は農村社会学や農村経済学といった分野の知識を深めました。翌1932年には双子の娘を授かりますが、残念ながら幼くして亡くしています。

同年9月、再び来日したストーンは、浜松の高町教会（現在の日本基督教団浜松教会）に赴任しました。ここでは元浜松市長宅の一部を借りて生活し、宣教活動を行いました。彼の活動は教会での働きに留まらず、1933年からは児童養護施設である静岡ホームの理事長を複数回務め、困難な状況にある子どもたちの支援にも尽力しました。また、1934年には再び長野に赴任し、ダニエル・ノーマン宣教師と共に農村伝道に力を入れ、キリスト教月刊誌「北信新生」の発行も引き継ぎました。

戦中・戦後の活動

太平洋戦争が勃発する直前の1941年、ストーンはカナダへ帰国しました。戦時下、彼は故国で「敵性国民」として扱われた日系カナダ人の支援に奔走しました。終戦後の1946年、再び日本の地に戻ったストーンは、東京を拠点に活動を再開します。日本におけるカナダ合同教会の主事と財務を担当し、教派を超えた協力を推進する上で重要な役割を果たしました。

特に彼の情熱が注がれたのは、農村伝道でした。1947年12月、東京都町田市に農業伝道のための神学校である農村伝道神学校（鶴川学院）を設立し、その初代校長に就任。日本の農村におけるキリスト教の根付きと、地域社会のリーダー育成に献身しました。このほか、東京多摩地域に日本基督教団日野台教会を設立（1950年）するなど、新たな宣教の場を開拓しました。また、東洋英和女学院の理事を務めるなど、教育分野への貢献も行っています。

洞爺丸事故での最期

1954年、ストーンは札幌への赴任が決まります。その移動の途中、9月26日に函館から青森へ向かう青函連絡船「洞爺丸」に乗船しました。この時、偶然同乗していたYMCA宣教師のディーン・リーパーと共に、日本海を襲った台風による大事故に巻き込まれます。

生存者の証言によると、暴風雨の中で船が大きく揺れる中、ストーンとリーパーは他の乗客を落ち着かせ、励まし続けたといいます。そして、船が沈没する寸前、彼らは自らの救命胴衣をそばにいた若い日本人乗客に着せたと伝えられています。その行為は、彼ら自身の命と引き換えになったのです。

事故の翌日、救助された若者の母親が新聞社に「アメリカ人宣教師に救命胴衣をもらって助かった」と証言したことが報じられ、ストーンとリーパーの献身的な最期は「北海に散った神の使徒」として広く伝えられました。この犠牲に対し、日本政府はストーンに勲五等双光旭日章を追贈し、その功績と精神を讃えました。

後世への影響

アルフレッド・ラッセル・ストーンの生涯と、特に洞爺丸事故での崇高な行動は、多くの人々に感銘を与えました。作家の三浦綾子は、自身の小説『氷点』の中で洞爺丸事故とストーンを思わせる人物を描いています。また、ノンフィクション作家たちも、この事故におけるストーンやリーパーの行動を記録しています。

ストーンの働きを記念する史跡も各地に残されています。彼が農村伝道に尽くした長野県信濃町の野尻湖畔には記念碑が建てられ、彼が設立に関わった日本基督教団日野台教会の近くには「ストーンの森」と名付けられた場所があり、その奉仕の精神が今も伝えられています。

アルフレッド・ラッセル・ストーンは、日本の人々への深い愛情と、キリスト教の信仰に基づいた献身的な奉仕を通じて、多くの人々の心に生き続けています。彼の残した農村伝道の遺産や、最期に見せた自己犠牲の精神は、時代を超えて語り継がれるでしょう。

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