アルフレート・アーベル

アルフレート・アーベル（Alfred Abel）は、1879年3月12日に現在のドイツにあたるライプツィヒで生まれ、1937年12月12日にその生涯を終えた、ドイツ映画史において重要な足跡を残した俳優です。

彼のキャリアは、ドイツ映画が世界的に隆盛を極めたワイマール共和国時代を中心に展開されました。特にサイレント映画の時代において、その表現力豊かな演技は多くの観客を魅了しました。

アーベルの出演作の中でも、最も広く知られているのは、映画監督フリッツ・ラングが手がけたSF映画の金字塔『メトロポリス』です。この壮大な作品において、彼は都市の最高権力者であり、冷酷な支配者であるヨハン・“ジョー”・フレーダーゼン役を演じました。地下都市で働く労働者階級と、地上で繁栄を享受する支配階級との対立を描いたこの映画で、フレーダーゼンは資本主義社会における権力の象徴として描かれ、アーベルはその役柄に深みと迫力をもたらしました。彼の演じるフレーダーゼンの姿は、観客に強い印象を残し、『メトロポリス』が映画史に残る傑作として語り継がれる上で、欠かせない要素の一つとなっています。

『メトロポリス』での印象的な演技だけでなく、アルフレート・アーベルは生涯を通じて数多くの映画に出演しました。彼の出演作品は多岐にわたり、彼の俳優としての多様性を示しています。以下は、彼が出演したとされる主な作品の一部です。

思ひ出の曲
若きエリカの悲しみ
薔薇の寝床
白日鬼
會議は踊る
Ｏ・Ｆ氏のトランク
ラスター
ガアヅマン
メトロポリス（ジョー・フレーダーゼン）
メトロポリス (1984年)（ジョー・フレーダーゼン）
スワリン姫
燃ゆる大地
ファントム
ドクトル・マブゼ
名花サッフォー
白痴

これらの作品リストからは、彼が単なる『メトロポリス』の俳優ではなく、様々な監督の作品で多様な役柄を演じ分け、当時のドイツ映画界において多忙かつ重要な存在であったことがうかがえます。特にフリッツ・ラング監督とは、『メトロポリス』の他にも『ドクトル・マブゼ』などでも組んでおり、監督からの信頼が厚かったことが示唆されます。

アルフレート・アーベルは、サイレント映画からトーキー映画への移行期を生きた俳優でもあり、その時代の変化にも適応しながらキャリアを継続しました。彼の演じた役柄には、社会的な地位の高い人物から、より人間的な側面を持つキャラクターまで含まれており、その演技の幅広さが評価されています。

1937年に50代後半で亡くなりましたが、アルフレート・アーベルがドイツ映画界に残した功績、とりわけ『メトロポリス』における冷徹な支配者フレーダーゼン役は、映画史の中で輝き続けています。彼の出演作品は、当時のドイツ映画の芸術性や社会状況を理解する上で貴重な資料であり、アーベルという俳優の存在は、今日でも多くの映画ファンや研究者によって記憶され、語り継がれています。

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