アルブレダ

アルブレダ：ガンビアの歴史を刻む村

アルブレダは、ガンビアのノースバンク地方に位置する、マンディンゴ人が暮らす静かな農村です。ガンビア川に面したこの村は、歴史的な背景と文化的な魅力から、世界遺産「クンタ・キンテ島と関連遺跡群」の一部として保護されています。

歴史の舞台

アルブレダの歴史は、15世紀にポルトガル人がガンビア川に到達したことから始まります。彼らは村にキリスト教の礼拝堂を建設しましたが、恒久的な入植には至りませんでした。その後、17世紀後半にフランス人が交易拠点を築き、アルブレダはフランスの拠点として発展しました。

しかし、アルブレダはイギリスの主要な交易拠点であったジェームズ島（現在のクンタ・キンテ島）の向かいに位置していたため、領有権を巡って英仏間の争いが絶えませんでした。村は再建と放棄を繰り返し、その歴史は波乱に満ちています。興味深いことに、苛酷な環境下にもかかわらず、現地の滞在者たちは互いに友好的な関係を築き、真水の補給や宴席への招待など、交流を深めていたと言われています。

1814年のパリ条約により、アルブレダは正式にフランス領となりました。その後、1857年にモーリタニアの交易拠点と引き換えにイギリスに割譲されるまで、ガンビア川沿岸におけるフランスの重要な拠点として、その地位を確立しました。フランスはアルブレダを拠点として、関税をかけられることなくガンビア川流域に安価な商品を流通させることができました。

現在のアルブレダ

イギリスに割譲された後も、フランスの影響は完全に消え去ることはありませんでした。1902年には、フランス西アフリカ会社がアルブレダにあった建物を購入し、商店として利用しました。この建物は、正確な起源は不明ですが、フランス領時代の1847年にはすでに存在していたとされています。

現在、アルブレダでは河岸での稲作が盛んに行われています。また、内陸部では植民地時代からガンビアの主要な農産物である落花生の栽培が続けられています。河岸に面していることから、村には桟橋があり、クンタ・キンテ島へ向かう観光客の船着場として利用されています。ポルトガル人礼拝堂跡の近くには、活気ある魚市場や魚屋が軒を連ねています。村には2つのモスクがあり、人々の信仰の中心となっています。

隣接するジュフレ村には、世界遺産の構成資産である「モーレル兄弟の商館」（現在の奴隷貿易博物館）があり、アルブレダの稲作地帯と隣接しています。この商館は、奴隷貿易の歴史を伝える貴重な遺産であり、アルブレダの歴史的背景をより深く理解する上で重要な役割を果たしています。

アルブレダは、その歴史と文化、そして美しい自然が調和した魅力的な村です。世界遺産の一部として保護されながら、現在も人々の生活が息づいています。クンタ・キンテ島を訪れる際には、ぜひアルブレダにも立ち寄り、その歴史と文化に触れてみてください。

参考文献

The Gambia (2001), James Island and Related Sites (PDF) （ガンビア政府による世界遺産登録推薦書）
Arnold Hughes & Harry Gailey (1999), Historical Dectionary of The Gambia, Third Edition, London ; The Scarecrow Press
ICOMOS (2003), James Island (Gambia) / Île James (Gambie) (PDF) （ICOMOSによる世界遺産勧告書）
正木響 (2011) 「英領ガンビアの対仏割譲交渉とその社会経済史的背景」 （井野瀬久美惠 北川勝彦 編 『アフリカと帝国 - コロニアリズム研究の新思考にむけて』 晃洋書房、pp.117-137）
* バークレー・ライス (1968) 『愉快なガンビア建国記』 杉辺利英 訳、朝日新聞社

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