アルブレヒト・アルトドルファー

アルブレヒト・アルトドルファー：純粋な風景画の先駆者

アルブレヒト・アルトドルファー（Albrecht Altdorfer、1480年頃 - 1538年2月12日）は、ルネサンス期のドイツを代表する画家です。ドイツ南東部、レーゲンスブルクの生まれと推定され、父ウルリヒも写本挿絵画家であったことから、アルトドルファーも写本挿絵制作から画家の道を歩み始めたと考えられています。現存する作品の中に羊皮紙に描かれたものが多いことからも、その可能性は高いと言えるでしょう。

若き日のアルトドルファーの足取りは不明な点が多いものの、1491年にはレーゲンスブルクからアンベルクに移住、後に再びレーゲンスブルクに戻り、1505年には同市でマイスター（親方）として登録されています。20代半ばには既に独立した芸術家として活動していたことがうかがえます。

1515年頃には、神聖ローマ皇帝マクシミリアン1世の依頼による大規模な写本『マクシミリアン祈祷書』の制作にも参加。アルブレヒト・デューラーら著名な芸術家たちと共に、この歴史的なプロジェクトの一端を担ったのです。

芸術家としての活動と並行して、アルトドルファーはレーゲンスブルク市政にも深く関わります。1519年からは参事会員などの要職を務め、1526年には市の建築家にも任命されました。さらに1528年には市長就任の要請を受けますが、多忙な制作活動を理由に辞退しています。当時アルトドルファーが取り組んでいたのは、『アレクサンダー大王の戦い』という大作でした。これはバイエルン公ヴィルヘルム4世の依頼による歴史画で、膨大な人物を圧倒的な細密さで描き出した力作です。

アルトドルファーの芸術における最大の功績は、西洋絵画史において初めて、宗教画や歴史画の単なる背景としてではなく、独立した主題としての風景画を描いた点にあります。特に『城のある風景』（1526年 - 1528年頃制作）は、ドナウ川流域の美しい風景を見事に捉え、その後の風景画の発展に大きな影響を与えました。

アルトドルファーは、風景画のみならず、宗教画や歴史画など幅広いジャンルで傑出した作品を残しました。『エジプト逃避途上の休息』『森の中の聖ゲオルギウス』『修道院を去る聖フロリアヌス』『聖フロリアヌスの殉教』『聖母に別れを告げるキリスト』『ザンクト・フロリアン祭壇画』『聖母マリアの誕生』『スザンナと長老たち』など、彼の作品は現在も世界中の美術館に所蔵され、多くの人々を魅了し続けています。これらの作品は、細密な描写力と、深みのある色彩、そして独特の叙情性によって特徴付けられています。

1538年、アルトドルファーはレーゲンスブルクで生涯を閉じました。彼の残した作品は、ルネサンス期のドイツ絵画を代表するだけでなく、西洋絵画史における風景画の黎明期を彩る重要なものとして、現在も高く評価されています。彼の多才な才能と、風景画への先駆的な取り組みは、後世の芸術家たちに大きな影響を与え続け、現代においてもその芸術性は色あせることなく輝き続けています。

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