アレクサンドル・ヴァレフスキ

アレクサンドル・フロリアン・ジョゼフ・コロンナ＝ヴァレフスキ（フランス語: Alexandre Florian Józef Colonna-Walewski、ポーランド語: Aleksander Florian Józef Colonna-Walewski）は、1810年5月4日にこの世に生を受けた人物です。父はフランス皇帝ナポレオン・ボナパルト、母はその愛人であったポーランド貴族の女性マリア・ヴァレフスカでした。彼はナポレオンの唯一の庶子として知られています。出生地は、母の故国であるポーランドの首都ワルシャワ近郊に位置するヴァレヴィツェでした。

幼少期、ヴァレフスキは立て続けに両親との別れを経験しました。彼がまだ7歳の頃に母マリアが病に倒れ亡くなりました。そして、ほとんど直接会う機会がなかった実父ナポレオンも、彼が11歳となる1821年にセントヘレナ島で死去しました。

14歳を迎えた頃、ヴァレフスキはポーランドを支配下に置いていたロシア帝国からの圧力に反発します。ロシア陸軍への入隊を拒否し、祖国を離れてまずロンドンへ、次いでパリへと亡命を果たしました。ロシア当局は彼の身柄引き渡しをフランス政府に要求しましたが、当時のフランス政府はこれに応じませんでした。

1830年にフランスで7月革命が勃発し、ルイ・フィリップ1世が即位した後、ポーランドではロシア支配に対する大規模な反乱、いわゆる11月蜂起が発生しました。この蜂起に心を寄せたルイ・フィリップ1世は、ヴァレフスキをポーランドへ送りました。蜂起軍は彼を外交官に任命し、イギリスへの使者として再びロンドンへ派遣しました。しかし、この蜂起はロシアによって鎮圧され、失敗に終わりました。蜂起の終結後、ヴァレフスキはフランスに戻り、フランス国籍を取得しました。

フランス市民となったヴァレフスキは、フランス陸軍に入隊し、アルジェリアへの赴任も経験しましたが、軍歴は長くは続かず、1837年には除隊しています。

彼のキャリアが大きく飛躍するのは、1848年に第二共和政の大統領選挙で従兄のルイ＝ナポレオン・ボナパルトが当選した後のことでした。後にナポレオン3世としてフランス皇帝となるルイ＝ナポレオンに接近したヴァレフスキは、その信任を得て政界の中枢へと迎え入れられます。駐ロンドン大使として重要な外交ポストを務めた後、1855年にはエドゥアール・ドルーアン・ド・リュイスの後任として外務大臣に就任しました。

外務大臣として、彼はフランスの外交政策を主導し、特に1856年にパリで開催されたクリミア戦争の講和会議では、フランス代表として重要な役割を果たしました。この会議で、彼はヨーロッパにおけるフランスの発言力強化に貢献しました。

1860年に外務大臣を退任した後は、国務大臣へと横滑りし、1863年までその職を務めました。また、議会においては、1855年から1865年まで元老院議員を務めた後、皇帝ナポレオン3世の意向により立法院へ転じ、その議長に就任しました（1865年-1867年）。1866年には公爵の称号を授与されています。1867年に立法院議長を辞任した後は、再び元老院議員として政務に携わりました。

1860年頃からは体調を崩しがちになり、馬車での外出も困難になるほどだったと言われています。公の場に出る機会が減り、自宅に籠ることが多くなりました。そして、1868年10月27日、療養先のストラスブールで脳梗塞によりその生涯を閉じました。

ヴァレフスキは生涯で二度結婚しています。最初の結婚は1831年12月1日で、第6代サンドウィッチ伯爵の娘キャサリン・キャロライン・モンタギューと結ばれましたが、彼女は1834年に亡くなりました。この結婚で生まれた1男1女はいずれも幼くして世を去っています。

1846年にはマリアンヌ・ディ・リッチと再婚し、彼女との間に2男2女をもうけました。このうち、息子のシャルルは後に金融機関クレディ・リヨネで人事部長を務めますが、第一次世界大戦中に戦地で病を得て亡くなりました。また、ヴァレフスキは有名な女優ラシェル・フェリックスとの間にも庶子のアレクサンドルをもうけており、このアレクサンドルの息子にあたるアンドレは、タクシー事業で財を成したことで知られています。

アレクサンドル・ヴァレフスキは、ナポレオン1世の血を引きながら、父の帝政とは異なる第二帝政期において、フランスの政治と外交の舞台で重要な役割を果たした人物と言えるでしょう。

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