アレクセイ・コンスタンチノヴィッチ・トルストイ

アレクセイ・コンスタンチノヴィッチ・トルストイは、1817年9月5日（ユリウス暦8月24日）にサンクトペテルブルクで生を受けました。彼は、文豪レフ・トルストイや著名な活動家ピョートル・トルストイらを輩出した、ロシア屈指の名門であるトルストイ伯爵家の一員でした。

幼少期を経て、彼は1836年にモスクワ大学を卒業します。その後、彼の人生の大半は国家への奉仕、特に宮廷での職務に費やされました。彼は儀典長（Master of Ceremonies）として宮廷儀礼に関わり、後には皇室猟師長（Grand Master of Royal Hunting）といった要職を歴任しました。しかし、官職に身を置きながらも、彼の心は常に文学に向けられていました。1861年、彼は長年勤めた公職から身を引き、文筆活動に専念するための時間を確保しました。

作家としてのトルストイは、その才能を多岐にわたるジャンルで発揮しました。彼は情感豊かなバラード、時には奔放な詩を多数発表しています。また、小説家としても知られ、特に歴史小説『白銀侯爵』（1863年）は彼の代表作の一つです。この作品は、動乱期のロシアを描き、読者の心を捉えました。さらに、『吸血鬼（ウプイリ）』や『三百年後の出会い』といった神秘的・幻想的な短編小説も手掛け、その独特の世界観を示しています。風刺文学の分野では、ジェムチュージュニコフ兄弟と共に「コジマー・プルトコーフ」という共通の筆名を使用し、社会や文学界の偽善を痛烈に批判する作品を発表しました。

しかし、彼のロシア文学史における最も重要な貢献とされるのは、劇作家としての活動です。特に、アレクサンドル・プーシキンの歴史劇『ボリス・ゴドゥノフ』に範を得た三部作、すなわち『イヴァン雷帝の死』（1864年）、『皇帝フョードル・イヴァノヴィチ』（1868年）、『皇帝ボリス』（1870年）は、彼の名を不朽のものとしました。これらの作品は、ロシアの歴史における激動の時代を背景に、権力、信仰、人間の苦悩を深く掘り下げたものであり、今日でも演劇や文学研究の対象となっています。その他にも、『ドン・ファン』（1862年）のような劇詩も執筆しています。

トルストイ家はウクライナに広大な所領を持っており、アレクセイ自身もウクライナと深いつながりがありました。彼は同時代のウクライナの作家たちと交流を持ち、特に流刑に処されていた国民的詩人タラス・シェフチェンコの処遇改善のために尽力しました。さらに、彼はロシア語だけでなく、ウクライナ語での詩作にも挑戦するなど、両国の文化に対する深い理解と愛情を示しました。

1875年10月10日（ユリウス暦9月28日）、アレクセイ・コンスタンチノヴィッチ・トルストイはその生涯を閉じました。官僚としての経験と貴族としての視点、そして幅広い文学への関心に裏打ちされた彼の作品群は、ロシア文学の多様性を示す貴重な遺産として、現代においても読み継がれています。

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