アレナウイルス科

アレナウイルス科（Arenaviridae）

アレナウイルス科は、ブニヤウイルス目に属するRNAウイルスの分類群の一つです。この科に属するウイルスは、一本鎖のアンビセンスRNAを2分子ゲノムとして持っていることが特徴です。ビリオン（ウイルス粒子）の直径は50から300ナノメートルで、エンベロープと呼ばれる膜構造を有しています。

特徴

アレナウイルスの最大の特徴は、ビリオン内に宿主細胞由来のリボソームとRNAを含んでいる点です。このリボソームが電子顕微鏡で観察すると砂のように見えるため、ラテン語で「砂」を意味する"arena"にちなんで命名されました。ウイルスは宿主細胞の細胞質内で増殖し、細胞質内に封入体を形成します。

分類と代表的なウイルス

アレナウイルス科は、大きく旧世界アレナウイルスと新世界アレナウイルスに分類されます。

旧世界アレナウイルス

ラッサウイルス (Lassa virus)：ラッサ熱の病原体として知られています。
リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス (lymphocytic choriomeningitis virus; LCMV)：リンパ球性脈絡髄膜炎を引き起こします。

新世界アレナウイルス

新世界アレナウイルスはさらにいくつかのクレードに分類されます。

クレードA
ピチンデウイルス (Pichinde virus)：無症候性感染を引き起こすことがあります。
ホワイトウォーター・アロヨウイルス (Whitewater Arroyo virus)：出血熱との関連が指摘されています。
クレードB
タカリベウイルス (Tacaribe virus)
マチュポウイルス (Machupo virus)：ボリビア出血熱 (Bolivian hemorrhagic fever; BHF) の原因となります。
フニンウイルス (Junin virus)：アルゼンチン出血熱 (Argentine hemorrhagic fever; AHF) を引き起こします。
グアナリトウイルス (Guanarito virus)：ベネズエラ出血熱 (Venezuelan hemorrhagic fever; VHF) の原因です。
サビアウイルス (Sabia virus)：ブラジル出血熱 (Brazilian hemorrhagic fever; BzHF) を引き起こします。
チャパレウイルス (Chapare virus)：出血熱との関連が報告されています。
クレードC
ラティーノウイルス (Latino virus)
オリベロスウイルス (Oliveros virus)
分類未 определено
ルジョウイルス (Lujo virus)：出血熱を引き起こすことがあります。

関連項目

アルゼンチン出血熱
ボリビア出血熱
ラッサ熱
リンパ球性脈絡髄膜炎

参考文献

鹿江雅光、新城敏晴、高橋英司、田淵清、原澤亮編　『最新家畜微生物学』　朝倉書店　1998年　ISBN 4254460198
* 原澤亮　「動物ウイルスの新しい分類（2005）」　『獣医畜産新報』　58号　921-931頁　2005年

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