アロウズ・A21

アロウズA21：2000年シーズンのオレンジの閃光と、その影

2000年のF1世界選手権を舞台に、アロウズチームはマイク・コフラン設計による新型マシン、アロウズA21で戦いを挑みました。ドライバーには、チーム2年目のペドロ・デ・ラ・ロサと、かつてフットワークで活躍したヨス・フェルスタッペンという強力な布陣が組まれました。

このマシン最大の特徴は、マクラーレンに倣ったローノーズデザインと、当時としては珍しいプルロッド式フロントサスペンションの採用です。プルロッド式はダンパーをモノコック下部に配置することで重心低下のメリットをもたらし、マシンのハンドリング向上に貢献しました。

パワートレインは、それまでの自社製ハートV10エンジンから、スーパーテックV10エンジンに変更。そして、新たなスポンサーとして携帯電話キャリアのOrangeが加わり、マシンは鮮やかなオレンジカラーに彩られました。

プレシーズンテストでは、その速さに関係者も驚くほどの潜在能力を見せつけました。シーズンに入っても、高速サーキットでのパフォーマンスは際立っており、17戦中7戦で最高速度を記録するという圧倒的な速さを誇りました。この記録の内訳はフェルスタッペンが4回、デ・ラ・ロサが3回で、この数字はマクラーレン・メルセデス（7回）、BAR・ホンダ（3回）に次ぐ好成績でした。

特にデ・ラ・ロサは、ドイツGPとオーストリアGPでは表彰台圏内で走行。しかし、ドイツGPではスピンにより6位、オーストリアGPではギアボックストラブルでリタイアと、惜しくも表彰台を逃しました。一方のフェルスタッペンもカナダGP5位、イタリアGP4位と好成績を残し、マシンのポテンシャルの高さを証明しました。

しかし、アロウズA21は信頼性の問題に悩まされました。シーズンを通して多くのリタイアを喫し、完走率はフェルスタッペンが18位、デ・ラ・ロサに至っては最下位の22位と、その速さを活かしきれない結果となってしまいました。

シーズンを終えたアロウズチームの獲得ポイントは7点、コンストラクターズランキングは7位という結果でした。オレンジのカラーリングが印象的なアロウズA21は、その速さと、同時に抱えた信頼性の問題という、相反する側面を鮮やかに象徴するマシンとしてF1の歴史に刻まれました。 潜在能力の高さと、それを阻む信頼性の低さという、アロウズチームの課題が浮き彫りになったシーズンでもありました。A21の開発に携わったスタッフや、マシンをドライブしたドライバー達の努力は、このマシンの性能と、そしてその結果に凝縮されています。

もう一度検索