アンシーズ
ライトノベル作家・宮沢周氏が手掛けた作品『アンシーズ』は、イラストを久世氏が担当し、集英社のスーパーダッシュ文庫より2009年9月から2010年3月にかけて全3巻が刊行されました。本作は、第8回スーパーダッシュ小説新人賞の佳作に輝いた実績を持っています。
物語の幕開けは、どこにでもいる普通の高校生である木之崎朋が、転入を予定している男子校、火群ヶ棚学園高校を下見に訪れたことから始まります。情報処理室でうっかり居眠りしてしまった朋は、目を覚ますと、理解不能な光景に巻き込まれていました。そこには、抜身のサーベルを構える金髪碧眼の美少女「ヒカル」と、巨大なハンマーを振り上げる黒い甲冑の戦士「黒耀」が、激しい戦闘を繰り広げていたのです。
突如として非日常の戦場に放り込まれ、混乱する朋。そんな彼に、ヒカルは緊急避難的に一本の針金、すなわち「抜刀芯」を与えます。その抜刀芯を手に取った瞬間、朋の体は変身を遂げ、「アンシー」と呼ばれる存在へと変わってしまいます。
アンシーとは、自らの内に秘めた「男らしさ」、力の源泉である「抜刀気」を武器へと変換し、戦う男子たちの総称です。彼らは抜刀芯を用いて「抜刀」することで、常人離れした五感や身体能力を持つ女性の姿に変身します。変身した際には、そのアンシー固有の「カタナ」と呼ばれる武器と、それぞれの個性を反映した衣服が出現します。彼らが活動できるのは「抜刀空間」と呼ばれる特定の領域内のみであり、この空間では現実とは異なる時間の流れを経験することもあります。アンシーにとって最も恐ろしいのは、戦闘中に「男を折られる」ことです。これは、変身を維持できなくなり、最終的には男に戻れなくなる現象を指します。男を折られたアンシーは、その存在が世界の認識から消え去り、「初めから女子だった」という形で周囲の記憶が改変され、通う学校すら変わってしまうのです。
状況が飲み込めないままアンシーとなった朋は、自らの「男」を武器とする異形の戦いに否応なく巻き込まれていくことになります。当初、ヒカルと俵屋力王丸の二人で細々と活動していたアンシーの小サークルに、朋が加入したことをきっかけに仲間が増え、結束を強めていきます。彼らは個々の能力が非常に高く、学園内で絶大な影響力を持つ生徒会からも一目置かれる存在となっていきます。
主人公の木之崎朋は、常識的な性格の少年ですが、幼い頃の父の言葉に影響され、自分の行動には最後まで責任を持とうとする頑固な一面も持ち合わせています。アンシーとして抜刀した彼の姿は、髪が伸びた「控えめ癒し系美少女」に変貌します。彼のカタナは日本刀「言想心丸」で、相手のカタナを容易く両断する「ヤイバ」（特殊能力）に加え、接触によって抜刀気を吸収・分配できるヤイバも持ちます。志士名は『トモ』です。
共に戦うヒカルは、金髪碧眼で言動は男らしいながらも、その正体は10年前に失踪した女子高生・七海光。折れたアンシーのカタナへの強い妄執が彼女をアンシーとしましたが、本来女の子であるためイレギュラーな存在です。納刀できず抜刀空間から出られないという問題を抱えています。カタナはサーベル、志士名は『ネームオブジャスティス』です。
もう一人の仲間である俵屋力王丸は、可愛らしい少女趣味の衣装を愛する少年で、手芸部の部長。美少女然とした外見とは裏腹に、男を抜刀した姿は彫りの深い「ハンサムな女性」となり、本人はこの姿を嫌っています。彼のカタナは裁縫針で、抜刀気で織られた布「檻秘（おりひめ）」を生成し、結界や拘束に用いるヤイバを持ち、その効果は納刀後も持続します。志士名は『リカ』です。
彼らを取り巻く世界には、様々なアンシーたちが存在します。学園最大最強のサークルである生徒会は、会長の古河千代を中心に、目的のためなら手段を選ばない冷徹な組織です。古河は複数のカタナを操り、特に自身のカタナ「暗夜黒絶･零代」のヤイバで他のアンシーから抜刀気を奪う恐るべき力を持っています。彼の実態は、10年前の生徒会長・真須田に憑依された被害者ですが、その圧倒的な力は物語の核心に関わります。生徒会には、黒い甲冑を纏う黒井耀や、眼帯姿の隊長といった強力な「五守」が存在します。
また、生徒会とは異なる小サークル「竜巻組」も登場します。リーダーのギルを中心に、固い結束で結ばれた彼らは、刀競大武会だけでなく、アルバイトや悪事を働く「野良アンシー」の退治なども行います。
アンシーたちの間で都市伝説として囁かれる「七七七（よろこ）」も物語の重要な存在です。かつて真須田の罠にはまり凄惨な過去を持つ彼女は、他のアンシーが同じ目に遭わぬよう、カタナを強制的に折って戦線から離脱させる存在です。そのカタナ「ヴァンパイア」は、他者の抜刀気を吸収し、自己のカタナ再生や抜刀気回復を行うヤイバを持ちます。
火群ヶ棚学園では、アンシーたちの秘密の武闘会「刀競大武会」が開催されます。これは特定の曜日に校内の教室を奪い合う陣取り合戦であり、一年間の結果で優勝したサークルは「どんな願いでも叶う」という噂の賞品を得られるとされています。学園側もアンシーの存在を把握し、一部の生徒に抜刀芯を与えているなど、物語の舞台として異質な側面を持っています。
このように、『アンシーズ』は、特殊な力を持つ男子たちが女性の姿で戦うというユニークな設定のもと、主人公の成長、仲間との絆、学園内の勢力争い、そして過去の因縁が複雑に絡み合うバトルファンタジーとして描かれています。全3巻で完結しており、その独特の世界観とキャラクター描写が魅力の作品。
物語の幕開けは、どこにでもいる普通の高校生である木之崎朋が、転入を予定している男子校、火群ヶ棚学園高校を下見に訪れたことから始まります。情報処理室でうっかり居眠りしてしまった朋は、目を覚ますと、理解不能な光景に巻き込まれていました。そこには、抜身のサーベルを構える金髪碧眼の美少女「ヒカル」と、巨大なハンマーを振り上げる黒い甲冑の戦士「黒耀」が、激しい戦闘を繰り広げていたのです。
突如として非日常の戦場に放り込まれ、混乱する朋。そんな彼に、ヒカルは緊急避難的に一本の針金、すなわち「抜刀芯」を与えます。その抜刀芯を手に取った瞬間、朋の体は変身を遂げ、「アンシー」と呼ばれる存在へと変わってしまいます。
アンシーとは、自らの内に秘めた「男らしさ」、力の源泉である「抜刀気」を武器へと変換し、戦う男子たちの総称です。彼らは抜刀芯を用いて「抜刀」することで、常人離れした五感や身体能力を持つ女性の姿に変身します。変身した際には、そのアンシー固有の「カタナ」と呼ばれる武器と、それぞれの個性を反映した衣服が出現します。彼らが活動できるのは「抜刀空間」と呼ばれる特定の領域内のみであり、この空間では現実とは異なる時間の流れを経験することもあります。アンシーにとって最も恐ろしいのは、戦闘中に「男を折られる」ことです。これは、変身を維持できなくなり、最終的には男に戻れなくなる現象を指します。男を折られたアンシーは、その存在が世界の認識から消え去り、「初めから女子だった」という形で周囲の記憶が改変され、通う学校すら変わってしまうのです。
状況が飲み込めないままアンシーとなった朋は、自らの「男」を武器とする異形の戦いに否応なく巻き込まれていくことになります。当初、ヒカルと俵屋力王丸の二人で細々と活動していたアンシーの小サークルに、朋が加入したことをきっかけに仲間が増え、結束を強めていきます。彼らは個々の能力が非常に高く、学園内で絶大な影響力を持つ生徒会からも一目置かれる存在となっていきます。
主人公の木之崎朋は、常識的な性格の少年ですが、幼い頃の父の言葉に影響され、自分の行動には最後まで責任を持とうとする頑固な一面も持ち合わせています。アンシーとして抜刀した彼の姿は、髪が伸びた「控えめ癒し系美少女」に変貌します。彼のカタナは日本刀「言想心丸」で、相手のカタナを容易く両断する「ヤイバ」（特殊能力）に加え、接触によって抜刀気を吸収・分配できるヤイバも持ちます。志士名は『トモ』です。
共に戦うヒカルは、金髪碧眼で言動は男らしいながらも、その正体は10年前に失踪した女子高生・七海光。折れたアンシーのカタナへの強い妄執が彼女をアンシーとしましたが、本来女の子であるためイレギュラーな存在です。納刀できず抜刀空間から出られないという問題を抱えています。カタナはサーベル、志士名は『ネームオブジャスティス』です。
もう一人の仲間である俵屋力王丸は、可愛らしい少女趣味の衣装を愛する少年で、手芸部の部長。美少女然とした外見とは裏腹に、男を抜刀した姿は彫りの深い「ハンサムな女性」となり、本人はこの姿を嫌っています。彼のカタナは裁縫針で、抜刀気で織られた布「檻秘（おりひめ）」を生成し、結界や拘束に用いるヤイバを持ち、その効果は納刀後も持続します。志士名は『リカ』です。
彼らを取り巻く世界には、様々なアンシーたちが存在します。学園最大最強のサークルである生徒会は、会長の古河千代を中心に、目的のためなら手段を選ばない冷徹な組織です。古河は複数のカタナを操り、特に自身のカタナ「暗夜黒絶･零代」のヤイバで他のアンシーから抜刀気を奪う恐るべき力を持っています。彼の実態は、10年前の生徒会長・真須田に憑依された被害者ですが、その圧倒的な力は物語の核心に関わります。生徒会には、黒い甲冑を纏う黒井耀や、眼帯姿の隊長といった強力な「五守」が存在します。
また、生徒会とは異なる小サークル「竜巻組」も登場します。リーダーのギルを中心に、固い結束で結ばれた彼らは、刀競大武会だけでなく、アルバイトや悪事を働く「野良アンシー」の退治なども行います。
アンシーたちの間で都市伝説として囁かれる「七七七（よろこ）」も物語の重要な存在です。かつて真須田の罠にはまり凄惨な過去を持つ彼女は、他のアンシーが同じ目に遭わぬよう、カタナを強制的に折って戦線から離脱させる存在です。そのカタナ「ヴァンパイア」は、他者の抜刀気を吸収し、自己のカタナ再生や抜刀気回復を行うヤイバを持ちます。
火群ヶ棚学園では、アンシーたちの秘密の武闘会「刀競大武会」が開催されます。これは特定の曜日に校内の教室を奪い合う陣取り合戦であり、一年間の結果で優勝したサークルは「どんな願いでも叶う」という噂の賞品を得られるとされています。学園側もアンシーの存在を把握し、一部の生徒に抜刀芯を与えているなど、物語の舞台として異質な側面を持っています。
このように、『アンシーズ』は、特殊な力を持つ男子たちが女性の姿で戦うというユニークな設定のもと、主人公の成長、仲間との絆、学園内の勢力争い、そして過去の因縁が複雑に絡み合うバトルファンタジーとして描かれています。全3巻で完結しており、その独特の世界観とキャラクター描写が魅力の作品。
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