アンチクライスト (映画)

映画『アンチクライスト』概要

『アンチクライスト』（原題：Antichrist）は、2009年に公開されたラース・フォン・トリアー監督・脚本によるホラー・スリラー映画です。本作品は、ウィレム・デフォーとシャルロット・ゲンズブールが主演し、プロローグ、4つの章、およびエピローグで構成されています。この映画はデンマークを中心に、ドイツ、フランス、スウェーデン、イタリア、ポーランドの映画会社によって制作されました。

ストーリー

プロローグ

物語は、雪が降る夜、夫婦が親密な時を過ごしている最中に始まります。しかし、その快楽に没頭している間、彼らの一人息子が窓から転落して死んでしまいます。この不運な事故は、彼らの愛の絆に深刻な亀裂をもたらします。

第一章：嘆き

葬儀の日、妻は精神的なショックから気を失い、入院します。子供を失った悲しみは彼女を悪夢に苛むことになり、夫は治療を試みますが、肉親に手を加えることが禁忌であることを知りつつも、その思いに駆られます。妻は自らが恐れる場所として森を挙げ、そこはエデンであると主張します。夫婦はその謎を解くため、エデンの森へと向かいます。

第二章：痛み（混沌と支配）

夫は深い森の中の小屋にたどり着き、妻の治療に没頭します。彼は彼女の内面的な闇に立ち向かい、彼女の回復を願っています。

第三章：絶望（魔女狩り）

ある日、妻は性交渉の中で、夫に自分を殴るように懇願します。この行為を通じて、彼女の心の奥に潜む痛みをさらけ出します。夫は屋根裏部屋で妻の過去の文献や日記を発見し、彼女が抱えていた苦悩に気づきます。しかし、妻は自身の狂気に取り込まれ、夫を束縛することに執着します。夫は逃げることを試みますが、妻によって再び捕らえられます。

第四章：3人の乞食

妻は息子の死を見過ごした自責の念に苛まれ、人を傷つけることが解放につながると信じています。遂には夫に対して暴力的な行為を望むまでに至ります。夫は自身を守るため、妻との衝突を避けようとしますが、彼の努力は空回りし、悲劇が展開します。

エピローグ

夫は、妻の死を受け入れ、山小屋を後にして人里へ向かいます。その途中、顔のない無数の女性たちに囲まれるという、恐怖のシーンで物語は幕を閉じます。

キャスト

• - 夫：ウィレム・デフォー（日本語吹き替え：大塚芳忠）
• - 妻：シャルロット・ゲンズブール（日本語吹き替え：田中敦子）

制作背景

本作はもともと2005年に製作が計画されていましたが、さまざまな事情から撮影が延期された過去があります。特に監督自らの健康問題や、内容の漏れとそれに対する怒りが影響を及ぼしました。

公開と評価

2009年のカンヌ国際映画祭で初めて公開され、物議を醸しました。映画は賛否が分かれ、観客の中には激しい暴力に耐えきれず気を失う者もいました。一方、シャルロット・ゲンズブールは女優賞を受賞しましたが、作品そのものは「女性嫌い」との評価を受け、最低賞も贈られる羽目に。アメリカでは批評家からの評価が分かれましたが、デンマークでは好評を得ました。

本作は、痛み、狂気、対立といったテーマを深く掘り下げることで、視聴者に強い印象を残す作品となりました。

もう一度検索