アンティオキアのマルガリタ

聖マルガリタ（アンティオキアのマルガリタ）

聖マルガリタ、またはアンティオキアのマルガリタは、正教会・非カルケドン派・カトリック教会・聖公会で聖人とされる乙女殉教者です。西方教会では7月20日、正教会では7月17日（ユリウス暦使用時は7月30日相当）が記念日であり、聖大致命女マリナとも呼ばれます。

概説

マルガリタは伝説上の人物であり、その実在性は非常に疑わしいとされています。494年には教皇ゲラシウス1世がマルガリタへの信心を正統ではないと宣言しましたが、信仰は衰えず、十字軍時代に再び盛んになりました。彼女の伝記を読んだり、取りなしを願うことで免償が得られると信じられ、それが信仰をさらに高めました。

『黄金伝説』によれば、マルガリタはピシディアのアンティオキア（現在のトルコ・アンタルヤ近郊）で、異教の祭司アエデシウスの娘として生まれました。キリスト教に改宗したため父から疎まれ、養母と羊飼いとして暮らしました。地方高官オリブリウスから結婚を申し込まれますが、キリスト教信仰を捨てることを拒否したため捕らえられ、拷問を受けます。拷問中には数々の奇跡が起こり、例えば、ドラゴンの姿をした悪魔に飲み込まれた際、持っていた十字架でドラゴンの体内を傷つけ、無事に脱出しました。この「苦難を乗り越えて胎内から出てきた」という伝説から、民衆信仰では妊婦・出産の守護聖人として崇敬されています。マルガリタは304年に殉教したとされています。

ギリシャの教会ではマルガリタは「マリーナ」と呼ばれ、7月17日に祝われます。彼女は聖ペラギアと同一視されており、ギリシャ語のペラギアがラテン語のマリーナに対応します。伝承ではマルガリトとも呼ばれたとされますが、2人が同一人物であることを示す歴史的な資料はありません。ギリシャのマリーナはアンティオキアのピシディア由来の物語ですが、この区別は西方では失われました。

一部の学者は、マルガリタの伝説がアフロディテの物語に由来し、キリスト教に取り込まれたものと考えましたが、この説には確固たる根拠はありません。

聖マルガリタへの崇敬は特にイングランドで盛んであり、250もの教会が彼女に捧げられています。絵画では、彼女はしばしば竜から逃れる姿で描かれています。1969年の典礼改革で、歴史的な実在性が低いと判断されたマルガリタは典礼暦から削除され、公的な信心は行われなくなりましたが、民衆の信仰は依然として根強く残っています。彼女は十四救難聖人の一人であり、ジャンヌ・ダルクに幻で現れたことでも知られています。

関連項目

聖マルガリタ (修道士処女伝説)
エルサレムのペラギア
* ビテュニアのマリーナ

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