アントワーヌ・コワペル

アントワーヌ・コワペル（Antoine Coypel, 1661年4月11日 - 1722年1月7日）は、フランスの画家であり、その才能によって王室の筆頭画家 "premier peintre du roi" の地位にまで上り詰めました。

生涯

アントワーヌ・コワペルはパリで生まれました。彼の父であるノエル・コワペルもまた画家であり、異母弟にはノエル＝ニコラ・コワペル（Noël-Nicolas Coypel, 1690-1734）がいます。父ノエルはフランス王室で重要な画家として活躍し、1673年には在ローマ・フランス・アカデミーの校長に任命されました。この時、12歳のアントワーヌは父と共に1673年から1675年までローマに滞在し、父から美術の基礎を学びました。ローマでは、ルネサンスの巨匠たちの作品や古代彫刻に触れ、その影響を受けました。特に、イタリア・バロックの画家たち、とりわけコレッジョの作品から強い影響を受けました。

パリに戻ったアントワーヌは、コレージュ・ダルクール（Collège d'Harcourt）で古典文学を学びました。若くしてその才能は認められ、20歳の時に王立絵画彫刻アカデミーの会員に選出されました。これは、彼の卓越した技術と将来性に対する高い評価の証と言えるでしょう。

その後、アントワーヌは画家として着実に成功を収め、ヴェルサイユ宮殿をはじめとする多くの宮殿の装飾画を手がけました。その作品は、宮廷の華やかさを彩り、彼の名声を高めることに貢献しました。1710年には王室絵画コレクションの館長に就任し、1716年にはついに王室の筆頭画家 "premier peintre du roi" の称号を得ました。これは、彼がフランス美術界において頂点を極めたことを意味します。

アントワーヌ・コワペルはパリで亡くなりました。1688年にマリー＝ジャンヌ・ビドー（Marie-Jeanne Bideau）と結婚し、息子であるシャルル＝アントワーヌ・コワペル（Charles-Antoine Coypel, 1694-1752）もまた歴史画家として名を残しています。

作品の特徴と影響

アントワーヌ・コワペルの作品は、バロック様式の影響を受けつつも、独自の洗練された美しさを持っています。彼は、神話や歴史を題材とした壮大な作品を多く手がけ、その色彩感覚と構図の妙によって、見る者を魅了しました。また、肖像画家としても優れており、多くの貴族や王族の肖像画を描きました。

彼の作品は、同時代の画家たちに大きな影響を与え、フランス美術の発展に貢献しました。特に、息子のシャルル＝アントワーヌ・コワペルをはじめとする後進の画家たちに、その画風や技法が受け継がれました。

まとめ

アントワーヌ・コワペルは、17世紀後半から18世紀初頭にかけてのフランス美術界を代表する画家の一人です。その卓越した才能と努力によって、王室の筆頭画家という栄誉に輝き、多くの宮殿の装飾画や肖像画を手がけました。彼の作品は、バロック様式の華やかさと洗練された美しさを兼ね備えており、後世の画家たちに大きな影響を与えました。

主な作品

「聖テレサの法悦」
「ベレニケ」
「アブラハムと三天使」
「自画像」

参考文献

* Dorothea Schille, Die Kunsttheorie Antoine Coypels: eine Ästhetik am Übergang vom Grand Siècle zum Dixhuitième, Europäische Hochschulschriften (Dissertation Bochum 1995)

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