アントン・イェルチン

アントン・ヴィクトロヴィッチ・イェルチンの生涯

アントン・ヴィクトロヴィッチ・イェルチンは、1989年3月11日に当時のソビエト連邦のレニングラードで誕生しました。彼の両親はフィギュアスケートのペア選手として有名でしたが、ユダヤ人であることから1972年の札幌オリンピックに出場できなかった経歴を持っています。1989年に一家は難民としてアメリカに移住し、ロサンゼルスで新たな生活を始めました。

子供の頃から演技に情熱を持ち、4歳から演技を学び始めました。ロサンゼルスのマグネット・スクールで学び、やがて南カリフォルニア大学に進学しました。アントンは9歳のときに俳優活動をスタートし、2001年には『アトランティスのこころ』でアンソニー・ホプキンスと共演し、その演技が評価されヤング・アーティスト賞を受賞しました。この作品を通じて彼の名が広まり、以降も多くの映画に出演しました。

彼は『15ミニッツ』（ロバート・デニーロ主演）や『スパイダー』（モーガン・フリーマン主演）、テレビシリーズ『TAKEN』等に出演し、演技力が高く評価されるようになりました。また、『HUFF〜ドクターは中年症候群』ではハンク・アザリア演じる主人公の息子として登場し、多くの視聴者に感動を与えました。

2006年以降は、グリフィン・ダン監督の『Fierce People』や、デイヴィッド・ドゥカヴニーの初監督作品『最高のともだち』、ニック・カサヴェテス監督の『アルファ・ドッグ 破滅へのカウントダウン』などでの主演が続きました。さらに、2009年には『スター・トレック』でのパヴェル・チェコフ役や『ターミネーター4』のカイル・リース役により、彼のキャリアは飛躍的に広がりました。

アントンは、自身の魅力的な容姿から『ピープル』誌の「最も美しい人100人」にも選ばれましたが、彼の人生は悲劇的な形で幕を閉じることになります。2016年6月19日、友人たちが彼の自宅を訪れた際、アントンは自宅の車の間に挟まれて亡くなっているのが発見されました。27歳という若さでの死は、多くの人々に衝撃を与えました。彼の車はエンジンがかかっており、ギアはニュートラルの状態であったことから、坂を下りてきた車に押し潰されたと考えられています。彼は最後の作品となる『サラブレッド』の撮影を終えたばかりでした。

私生活では、アントンはアコースティック音楽を好み、自身のバンドでもギターとピアノを演奏していました。彼の多彩な才能と独特の個性は、映画界だけでなく多くのファンの心にも残り続けています。彼の作品は今後も語り継がれていくことでしょう。

もう一度検索