アンドラの共同公

アンドラの共同公：二人の元首が統べる国

アンドラ公国は、独特な共同君主制を敷く国家です。その元首である共同公は、一風変わってウルヘル司教とフランス大統領という、二人の異なる立場の人物が務めています。

歴史的背景

アンドラの歴史は、9世紀にウルヘル伯領が設置されたことに始まります。839年、ウルヘル司教はアンドラに対する教権行使を認められ、次第に世俗的な権力も掌握するようになりました。司教は地元の豪族に権利を分け与えましたが、フォワ伯がその権利を継承し、ウルヘル司教との間でアンドラの統治権を巡る対立が生じました。

1278年、両者は徴税、裁判、徴兵といった封建領主権を共有する宗主契約を結び、対等の領主としてアンドラを共同統治することで合意しました。この契約が、現代のアンドラにおける共同公の起源となっています。

フォワ伯の請求権は、1479年にナバラ王が継承し、1589年以降はフランス革命までフランス国王が引き継ぎました。フランス革命期には関係が一時断絶しましたが、その後はフランスの国家元首がウルヘル司教と共に共同公の地位を担うようになりました。

権限の変遷

700年以上にわたり伝統的な支配体制が続いていましたが、1982年に立法と行政が分離され、アンドラ初の首相が誕生しました。さらに1993年には、国民主権と議会制民主主義を定める憲法が制定され、共同公の権限は象徴的なものへと移行しました。

現在、共同公は総選挙や国民投票の公示といった形式的な権限を行使しますが、その際には首相または総評議会議長の副署が必要です。しかし、法律や条約の違憲性について憲法裁判所に事前審査を要求するなど、独自の権限も保持しています。

共同公は、その職務の都合上アンドラに常駐することはほとんどなく、自らの代理人を任命することができます。

日本語表記について

共同公という元首の肩書について、定訳は存在しません。日本外務省は「国家元首」と表記し、辞典類では「共同元首」や「共同君主」といった訳語が用いられています。

まとめ

アンドラの共同公は、歴史的な経緯から生まれた独特な制度です。その権限は時代とともに変化しましたが、現在もアンドラの国家元首として重要な役割を果たしています。

参考文献
遠藤誠 (2016年3月15日). “アンドラの法制度の概要” (pdf). BLJ法律事務所.

関連項目
アンドラ君主一覧

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