アンドレイ・ラズモフスキー

アンドレイ・キリロヴィチ・ラズモフスキー伯爵

アンドレイ・キリロヴィチ・ラズモフスキー伯爵（1752年11月2日 - 1836年9月23日）は、ロシアの著名な外交官であり、ウィーンでの活動を通じて歴史に名を刻んだ人物です。彼の名前の英語表記には、RazumovskyやRasoumoffskyなどのバリエーションがありますが、特に1815年のパリ条約において用いられた綴りが注目されます。

生い立ちと初期の経歴

ラズモフスキーは、ザポロージャの最後のヘーチマンであるキリル・ラズモフスキーと、ロシア皇帝エリザヴェータの従姉妹エカチェリーナ・ナルイシキナの間に生まれました。彼はまた、「夜の皇帝」という異名を持つアレクセイ・ラズモフスキーの甥でもありました。サンクトペテルブルクには、キリル・ラズモフスキーの後期バロックスタイルの宮殿が残っており、これは彼の家族の歴史を物語っています。

1792年、彼はウィーンのハプスブルク家の宮廷でロシアの外交官として任命され、この役職はナポレオン時代において極めて重要なものでした。1824年、ラズモフスキーはウィーン会議での首席交渉官を務め、ロシアのポーランドにおける権益を積極的に主張しました。1815年には公爵に叙任されますが、その後の火災によって彼の人生は大きく変わり、ウィーンでの隠遁生活の中で生涯を終えました。

音楽への貢献

ラズモフスキーは音楽の支援者としても知られています。1808年にはシュパンツィヒ四重奏団を設立し、イグナーツ・シュパンツィヒやルイーズ・ジーナ、フランツ・ヴァイスなどを団員として迎え入れました。また、彼自身もアマチュアのヴァイオリニストとしての才能を持ち、ウクライナ特有の楽器であるtorbanの優れた奏者でもありました。彼が所有していたtorbanは4個あり、その一つは現在ウィーンの美術史美術館に所蔵されています。

特に彼の音楽的な名声は、ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンに3つの弦楽四重奏曲を委嘱したことによって広まりました（ラズモフスキー第1番、第2番、第3番）。ラズモフスキーは、各曲にロシア的な主題を使用するように依頼し、結果的に最初の2曲にはウクライナのテーマが取り入れられました。

宮殿と火災

ラズモフスキーは、ウィーン市内近郊に新古典主義の宮殿を自らの資金で建設しました。この宮殿は、古代から同時代の芸術作品で満たされ、彼の美術への深い愛情を示しています。設計はルイ・モントワイエによって行われました。しかし、1814年の大晦日、皇帝アレクサンドル1世を名誉客として招待した舞踏会の準備中に、仮設の舞踏場から火災が発生し、宮殿内部にあった多くの美術品が焼失してしまいました。

ラズモフスキーはまた、ベートーヴェンの重要なパトロンの一人でもありました。さらには、彼の最初の妻エリザベート・フォン・トゥーンは、カール・アロイス・フォン・リヒノフスキー侯爵の義理の兄弟にあたります。彼の名を冠したラズモフスキーガッセという通りが1862年にウィーンに設立されており、ラズモフスキーの影響を感じさせます。さらに、彼の260周年記念となる2012年には、ウクライナのラズモフスキー宮殿で音楽祭が開催されるなど、その功績は今でも記憶されています。

彼の生涯は、ロシアとウィーンの外交・文化の架け橋として評価され、多くの分野にわたる影響を与えました。

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