アンナと過ごした4日間

『アンナと過ごした4日間』（原題：Cztery noce z Anną）は、2008年に公開されたポーランドとフランスの合作映画です。監督を務めたのは、巨匠イエジー・スコリモフスキ。1991年の『フェルディドゥルケ』以来、実に17年ぶりの監督作品となります。

物語の舞台は、ポーランドの寂れた地方都市。主人公は、火葬場で働く中年男性レオンです。彼は老いた祖母と二人暮らしをしており、日々平凡な生活を送っていました。そんなある日、レオンは釣りに出かけた先で、衝撃的な光景を目撃します。看護婦のアンナが何者かにレイプされている現場を偶然見てしまったのです。

レオンはすぐに警察に通報しますが、状況証拠から犯人と誤解され、逮捕されてしまいます。釈放後も、心に深い傷を負ったアンナへの思いが募り、レオンは彼女の部屋を監視するようになります。彼のアンナへの想いは、単なる同情を超えた、強い恋心に変わっていたのです。

しかし、病院での仕事は失ってしまいます。生活に困窮し、追い詰められたレオンは、遂にアンナに睡眠薬を盛って彼女の部屋に忍び込むという、極端な行動に出ます。

この映画は、レオンの視点を通して物語が展開されます。彼の行動は倫理的に問題が多いものですが、スコリモフスキ監督は、レオンの孤独や社会からの疎外感、そしてアンナへの歪んだ愛情を、繊細かつリアルに描き出しています。

キャストには、レオン役をアルトゥール・ステランコ、アンナ役をキンガ・プレイスが演じています。脇を固めるのは、イエジー・フェドロヴィチ演じる病院の院長や、バルバラ・コウォジェイスカ演じるレオンの祖母など、個性豊かな俳優陣です。

スコリモフスキ監督は、脚本も手掛けており、物語の細部に至るまで彼の監督哲学が反映されています。撮影はアダム・シコラ、美術はマレク・ザヴィェルハと、実力派スタッフが名を連ねています。音楽はミハウ・ロレンツが担当し、作品の雰囲気をさらに深めています。

『アンナと過ごした4日間』は、第21回東京国際映画祭のコンペティション部門に出品され、審査員特別グランプリを受賞しました。高い評価を得たこの作品は、現代社会における人間の孤独や暴力、そして愛と憎しみの複雑さを問いかける、重厚なドラマです。観客に強い衝撃と、考えさせられる余韻を残す、忘れがたい一本と言えるでしょう。

この映画は、倫理的に問題のあるレオンの行動を描きながらも、彼の内面世界を丁寧に描写することで、観客に多角的な解釈を促します。単なる犯罪ドラマではなく、現代社会の闇と人間の心の葛藤を描いた、複雑で奥深い作品なのです。様々な解釈が可能な、まさに「問題作」と言えるでしょう。

興味のある方は、ぜひ一度鑑賞してみてください。ただし、作品の内容は衝撃的であるため、鑑賞の際にはご注意ください。

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