アンナ・ネトレプコ

アンナ・ネトレプコ：美貌と才能、そして政治の波に翻弄される歌姫

アンナ・ユーリエヴナ・ネトレプコ（Anna Yur'yevna Netrebko, 1971年9月18日 - ）は、ロシア出身のオペラ歌手であり、現代最高のソプラノ歌手の一人として世界的に知られています。その歌唱力はもとより、美貌でも人々を魅了し、オペラ界のスターとして輝き続けています。現在はウィーンとニューヨークに拠点を置き、国際的な活動を展開しています。

輝かしいキャリア

ネトレプコは1971年、ロシア南部のクラスノダールで生まれ、サンクトペテルブルク音楽院で声楽を学びました。1993年にモスクワのグリンカ声楽コンクールで優勝し、その才能を開花させます。1994年には、サンクトペテルブルクのマリインスキー劇場で「フィガロの結婚」のスザンナ役を演じ、オペラ歌手としてデビューを果たしました。

1995年にはサンクトペテルブルク音楽院を修了し、サンフランシスコ歌劇場でアメリカデビューを飾ります。その後、1997年に若手オペラ歌手を対象としたバルティカ賞を受賞し、同年にはキーロフ・オペラのイギリス公演に参加するなど、着実にキャリアを積み重ねていきました。

2002年にはドイツ・グラモフォンと専属契約を結び、ロランド・ヴィラゾンやエリーナ・ガランチャといった著名な歌手たちとの共演を通じて、ヨーロッパでの人気を確立しました。2005年には、ロシア国家賞を受賞し、ウラジーミル・プーチン大統領から直接表彰されるという栄誉に輝きました。2014年には、ソチオリンピックの開会式でオリンピック賛歌を独唱し、その歌声は世界中に届けられました。2017年には、ウィーン国立歌劇場で「オーストリア宮廷歌手」の称号を授与されています。

日本との縁

ネトレプコは、これまでに数多くの来日公演を行っています。1996年にはマリインスキー劇場来日公演で「カルメン」のミカエラ役を、2004年には小澤征爾音楽塾オペラ・プロジェクトVで「ラ・ボエーム」のムゼッタ役を演じました。その後も、2005年、2006年、2010年、2016年、2023年と、様々な演目で日本の観客を魅了し続けています。

私生活とスキャンダル

ネトレプコの私生活は、常に注目を集めてきました。2008年には男児を出産しましたが、男児の父親であるバリトン歌手のアーウィン・シュロットとは2013年に破局しています。2015年にはテノール歌手のユシフ・エイヴァゾフと結婚しましたが、2024年6月に離婚を発表しました。

近年、ネトレプコは政治的な問題にも巻き込まれています。2012年と2018年のロシア大統領選挙でウラジーミル・プーチンの選挙キャンペーンに協力したことや、2014年のロシアによるクリミア併合の際に親ロシア派への寄付を行ったことが批判を浴びました。

2022年のロシアによるウクライナ侵攻後、ネトレプコは戦争への反対を表明しましたが、プーチン大統領を明確に非難することを拒否したため、欧米の劇場から出演を取りやめられるなどの影響を受けました。しかしその後、ウクライナとの戦争を非難する声明を発表し、一部の劇場への出演を再開しています。

ウクライナ危機の影響

ロシアのウクライナ侵攻は、ネトレプコのキャリアに大きな影を落としました。プーチン大統領との関係を疑われ、欧米の主要な歌劇場から出演を拒否される事態となりました。メトロポリタン歌劇場の総裁は、「プーチン大統領を支援する芸術家とは関係を絶つ」と明言し、ネトレプコの降板を発表しました。また、所属事務所からも契約を解除されるなど、経済的な打撃も受けました。

しかし、ネトレプコはその後、ウクライナの戦争を非難する声明を発表し、自身の過去の行動について後悔の念を表明しました。これにより、一部の劇場への出演が再び可能となり、アレーナ・ディ・ヴェローナ音楽祭やモンテカルロ歌劇場など、ヨーロッパの舞台に復帰を果たしました。

苦難を乗り越えて

政治的な波に翻弄されながらも、ネトレプコはオペラ歌手としての情熱を失うことなく、舞台への復帰を目指しています。その歌声は、世界中のファンを魅了し続けており、今後の活躍が期待されています。彼女のキャリアは、才能と美貌だけでなく、政治と芸術の狭間で揺れ動く現代のアーティストの苦悩を象徴していると言えるでしょう。

もう一度検索