アンネローゼ・フォン・グリューネワルト

アンネローゼ・フォン・グリューネワルトは、田中芳樹のSF小説『銀河英雄伝説』に登場する、銀河帝国側の重要な人物です。旧名はアンネローゼ・フォン・ミューゼル。作中では「グリューネワルト伯爵夫人」と呼ばれることが多いですが、ラインハルトやキルヒアイスといった親しい間柄の者からは「アンネローゼ」と呼ばれます。

概要

主人公ラインハルトの実姉であり、銀河帝国第36代皇帝フリードリヒ4世の寵姫（公妾）となります。幼少の頃からその美貌で知られ、15歳という若さで宮廷に召し上げられました。皇帝の寵愛を受け、グリューネワルト伯爵夫人の家格と爵位を与えられます。最愛の姉が皇帝に奪われたことが、ラインハルトが帝国の簒奪と銀河統一を目指す動機の一つとなりました。ラインハルトが新銀河帝国を開闢すると、「グリューネワルト大公妃」と呼ばれるようになります。

略歴

帝国暦462年6月26日、下級貴族セバスティアン・フォン・ミューゼルとクラリベルの長女として誕生。
15歳の時、皇帝フリードリヒ4世の愛妾となることを事実上命令され、受諾。グリューネワルト伯爵夫人の称号を与えられ、家族と別れてノイエ・サンスーシの一角にある館へ移り住みます。この時から、彼女は前向きに生きることを諦めてしまいます。
帝国暦487年、アムリッツァ星域会戦でラインハルトが勝利した直後、フリードリヒ4世が心臓疾患で崩御し、寵姫としての束縛から解放されます。その後、シュワルツェンの館でラインハルトと同居しますが、488年9月9日にキルヒアイスがガイエスブルク要塞で亡くなると、失意と自責の念から館を去り、コンラート・フォン・モーデルら数人の近侍と共に、帝都西方にあるフロイデン山岳地帯の山荘へ移り住み、世間との関わりを絶った生活を送ります。
帝国暦489年6月、山荘を訪れたヒルダと初めて対面。幼帝エルウィン・ヨーゼフ2世誘拐計画に関連して山荘の警備許可を求められます。最初は拒否しますが、ヒルダの説得を受け入れ、以降は親交を深めます。
帝国暦490年（新帝国暦1年）、ラインハルトが皇帝に即位すると、アンネローゼもグリューネワルト大公妃の称号を与えられます。しかし、生活様式は以前と変わりませんでした。ラインハルトがフェザーンへ遷都した際も、キルヒアイスの墓がオーディンにあることから、アンネローゼをフェザーンへ呼び寄せることはありませんでした。
新帝国暦3年1月25日、ラインハルトとヒルダの結婚式に出席するため、コンラートを含む6名の近侍と共に、生涯初の恒星間宇宙旅行でオーディンからフェザーンへ向かい、5年ぶりにラインハルトと再会。その後はフェザーンに留まり続けます。4月、ラインハルトが妊娠中のヒルダを残してハイネセンへ向かう際、アンネローゼはラインハルトの提案でヒルダの元に留まり、彼女を支えることになります。5月14日、柊館炎上事件が発生しますが、ケスラーが救援に駆けつけるまでヒルダを守り抜き、ヒルダは無事に出産します。7月18日、病が悪化したラインハルトがフェザーンに帰還すると、アンネローゼとヒルダは仮皇宮で交代しながらラインハルトの看病と新生児の世話を続けました。7月26日、ラインハルトが崩御し、アンネローゼは深い悲しみに暮れます。

人物

聡明で穏やかな性格、そして美しく繊細な容姿を持っています。菓子作りは達人の域であり、フロイデンの山荘では刺繍の才能も発揮していました。常に控えめで、後宮にいても権力を求めず、ただラインハルトとキルヒアイスの無事を願い続けていました。しかし、下級貴族出身であったため、皇帝の寵愛を失ったベーネミュンデ侯爵夫人や門閥貴族からは反感を買っていました。寵妃の中でも特に厚い寵愛を受けていたとされており、後宮ではヴェストパーレ男爵夫人やシャウハウゼン子爵夫人以外の友人がいませんでした（藤崎版ではヒルダがこの2人の役割を担い、原作よりもヒルダとの接点が増えています）。

皇帝の寵愛にも関わらず政治に一切口出ししない姿勢は、リヒテンラーデ侯を始めとする帝国政府首脳陣からは好意的に受け止められ、評判も悪くありませんでした。キルヒアイスの死後はフロイデンの山荘で隠遁生活を送っており、人付き合いや派手な振る舞いを苦手としていることが窺えます。

作中の言動から、キルヒアイスに対して恋愛感情を抱いていたとも解釈できますが、その真意を誰にも語ることはありませんでした。キルヒアイスの死後、ラインハルトにその感情について問われた際も、無言と悲しげな表情で答えを濁し、真実を口にすることはありませんでした。

柊館炎上事件では、ヒルダと自身を襲撃した地球教のテロリストに対し、毅然とした態度で立ち向かい、オブジェを投げて応戦するなど、ラインハルトに劣らぬ勇敢さを見せました。この時、ヒルダはアンネローゼを「紛れもなく陛下の姉君」と評しています。

死期が迫ったラインハルトは、看病するアンネローゼに、大切にしていたキルヒアイスの遺髪が入ったペンダントを託します。その時の、覇気がなく、本来の優しさを湛えた瞳から、アンネローゼはラインハルトの死を悟ったとされています。

家族

母親のクラリベルは幼い頃に事故で亡くなっており、後宮に入る前は父と弟の3人で暮らしていました。父親のセバスティアンは帝国暦484年に病死しています。

作中の「後世の評価」

キルヒアイスの死後、ラインハルトを見捨てるように山荘に引き籠ったアンネローゼの態度は、後世の歴史家から非難されることもありました。興味深いことに、そのような非難をする歴史家は女性に限られることが多く、男性の歴史家からは、その非難に対する反論が多く見られます。

演じた人物

アニメ
潘恵子（OVA全般）
村田博美（劇場版黄金の翼）
坂本真綾（Die Neue These）
舞台
白羽ゆり（「銀河英雄伝説第一章銀河帝国篇」）
銀河英雄伝説@TAKARAZUKA
愛花ちさき（2012年本公演、2013年博多座公演）
瀬音リサ（少女時代）
伶美うらら（2012年新人公演）

もう一度検索