アンバーアラート

アンバーアラート（AMBER Alert）とは

アンバーアラートは、児童（未成年者）の誘拐事件や行方不明事件が発生した際に、テレビ、ラジオ、電光掲示板などのメディアを通じて発令される緊急事態宣言の一種です。このシステムは、事件の発生を地域住民に迅速に知らせることで、早期解決を目指すことを目的としています。

児童誘拐事件は、被害者の生命に関わる重大な事態に発展する可能性が高く、発生からいかに早く事件を特定し、解決するかが重要とされています。アンバーアラートは、主にアメリカ合衆国やカナダで運用されており、児童誘拐事件の解決に一定の成果を上げています。

概要

アンバーアラートは、児童誘拐事件が発生した際に、警察機関が所定の手続きを経て発令します。発令と同時に、緊急警報システム（EAS）やWEAを通じて、ラジオ局、テレビ局、携帯電話、道路上の電光掲示板など、あらゆるメディアを通じて地域住民に情報が伝達されます。

警報が発令されると、テレビ局やラジオなどのメディアは通常の番組を中断し、報道特別番組を放送するなどの対応を取ります。また、ほぼ全ての携帯電話に通知が送信されます。これは、甚大な被害が予測される自然災害時と同程度の対応です。

アンバーアラートの配信時には、誘拐犯と被害者の氏名や特徴、誘拐犯の車両の車種やナンバープレートなど、犯人と被害者を特定するための情報も同時に配信されます。住民からの情報提供を促すことで、迅速な事件解決を目指します。

AMBERは、「America's Missing: Broadcasting Emergency Response」の頭文字であると同時に、1996年にテキサス州アーリントンで誘拐され、命を奪われた少女アンバー・ハガーマン（Amber Hagerman）の名前にちなむダブル・ミーニングとされています。

地域によっては、ジョージア州のLevi's Call、ハワイ州のMaile Amber Alert、アーカンソー州のMorgan Nick Amber Alertなど、異なる名称が用いられることもありますが、これらはそれぞれの州で発生した児童誘拐殺害事件の被害者にちなんだ命名であり、児童誘拐事件の速やかな解決と被害者の救助を目的としている点は共通しています。

アメリカやカナダの大型店舗、スタジアム、病院、遊園地などでは、Code Adam（コード・アダム）という、迷子などで行方不明になった場合に発動される行動計画が存在します。職員や警備員が捜索し、発見できない場合は全米行方不明・搾取児童センター（NCMEC）やFBIなどの法的機関に通報されます（事態によってはアンバーアラートの発令も含む）。

コード・アダムは、1981年にウォルマートで発生した幼児誘拐・殺人事件をきっかけに策定されたもので、当時1歳で誘拐事件の犠牲になったアダム・ウォルシュ（Adam Walsh）から名づけられました。

成立までの経緯

1996年1月、テキサス州に住むアンバー・ハガーマン（当時9歳）が誘拐される事件が発生しました。自宅近くで自転車に乗っていた彼女が誘拐されるところを近隣住民が目撃し、地元警察と家族に連絡しました。しかし、当時、住民に知らせるためのインフラが未整備だったため、対応が後手に回りました。結果的にアンバーは殺害され、遺体は4日後に発見されました。この事件を契機に、児童誘拐事件の発生を地域住民に速やかに知らせるためのシステムを求める声が高まりました。

アンバーアラートシステムの初期は、緊急放送と同様の方法で、地元警察が主要ラジオ局にファックスを送信し、各ラジオ局がその情報をネットワークに流すという方式でした。しかし、この方法では、情報伝達の過程でエラーが生じたり、即応性が求められる児童誘拐事件において時間の損失が大きいという欠点がありました。また、あくまで情報伝達が目的であり、現在のような能動的な報知手段ではありませんでした。

1998年に非営利団体Child Alert Foundationがアンバーアラートの自動化を策定し、テレビ局やインターネットを含む各種媒体へアンバーアラートを一元的に送信できるようになりました。その後、2002年にNational Center for missing and Exploited Children (NCMEC)が設立され、アンバーアラートは大規模自然災害と同等の緊急度で放送されるようになり、EASなどのインフラを用いて、より能動的な報知がなされるようになりました。

発令に至るまで

誤謬を回避し、信頼性を維持するため、ほとんどのアンバーアラートの発令には厳格な規則が定められています。米国の場合、アンバーアラートは各州や自治体によって管理されているため、その運用や規則は異なりますが、米国法務省（U.S.DoJ）は以下のガイドラインを推奨しています。

1. 法執行機関（警察など）が誘拐発生の事実を確認していること。
2. 誘拐された子供が身体・生命の危険にさらされていることが明らかなこと。
3. 誘拐された児童および誘拐犯に関する明確な情報があること。
4. 誘拐された児童が17歳以下であること。

多くの法執行機関は2番目のガイドラインを採用していませんが、誘拐の可能性がありながら「誘拐の事実が明らかではない（迷子の可能性を除外できない）」としてアンバーアラートが発令されなかったことで未解決の失踪事件となっている事例も存在することから、基準の見直しを求める声もあります。

アンバーアラートが発令されると、所轄の法執行機関は、事件に関するデータを直ちにFBIのNational Crime Information Centerへ入力することが推奨されています。

もう一度検索