アンブレラ 日本-アメリカ合衆国、1984-91

アートプロジェクト『アンブレラ 日本-アメリカ合衆国、1984-91』

『アンブレラ 日本-アメリカ合衆国、1984-91』は、著名なアーティストクリストとジャンヌ＝クロードによる大規模なインスタレーションアートです。このプロジェクトでは、日本とアメリカの二つの異なる地域にそれぞれ巨大な傘を設置し、同時に二国間の文化の違いに光を当てる試みが行われました。傘は1991年に開花し、水田や乾燥した牧草地を彩り、多くの観客を魅了しました。

プロジェクトの概要

『アンブレラ』は、1984年にクリストとジャンヌ＝クロードが考案したもので、ソフトな素材で出来た傘が特徴です。日本側では青い傘が1340本、アメリカ側では黄色い傘が1760本、それぞれ設置されました。日本では茨城県の日立市と常陸太田市周辺が、アメリカではカリフォルニア州のテホン峠周辺が展示地として選ばれ、合わせて約47キロメートルにわたって傘が並べられました。

プロジェクト遂行には多くの時間と資材が必要でした。クリストとジャンヌ＝クロードは、このアートの実現に向けて、地権者や行政との交渉、および材料の手配やデザインに多くの時間を費やしました。彼らはアートに関わる資金を自己調達し、寄付やスポンサーシップを一切受け取らないという独自の方針を貫きました。

傘のデザインと設置

設置された傘は高さ6メートル、直径8.66メートルの八角形で構成されており、傘の支柱はアルミニウム製です。日本側の傘の青は、湿潤な気候と人の集まる都市の環境を象徴し、アメリカ側の黄色は乾燥した少人口の地域を表現しています。このように、傘の色使いもまた、日米の違いを強調する手段となっています。傘のデザインは、訪れる人々に安らぎを与えるという意図が込められています。

プロジェクトの進行と展示期間

『アンブレラ』は1991年に、最初日本での設置が行われ、次にアメリカで設置されました。日本側の展示期間は1991年10月8日から29日までで、初日は悪天候の影響で延期されましたが、最終的には約57万人が日本側の展覧を訪れました。一方、アメリカでは約250万人に上る観客が訪れ、日米の両国ともに大きな注目を集めました。

ただし、イベント中の事故が悲劇的な結末を迎えます。10月26日、アメリカ側の会場で突然の強風により傘が飛ばされてしまい、観客が死亡する事故が発生。これを受けてクリストとジャンヌ＝クロードは、即座にプロジェクトを中止する決断を下しました。この事故後、傘の撤去作業中にも日本側で作業員が亡くなるという不幸な出来事が続きました。

影響と評価

『アンブレラ』は、アートの新しい形を提示するだけでなく、その後の「アートプロジェクト」としての重要性を強調するものとなりました。これにより地域に芸術を取り入れる取り組みが増え、地方都市や農村がアートの場として再評価されるきっかけとなりました。また、このプロジェクトの影響により、様々なアートイベントが日本各地で開催されるようになり、クリストとジャンヌ＝クロードの名前も広く知られるようになりました。

結論

『アンブレラ』は、芸術作品を通じて文化の違いを表現するだけでなく、地域社会におけるアートの重要性を再認識させるプロジェクトとして位置付けられています。事故という悲劇があったにもかかわらず、その独自性とインパクトは多くの人々の記憶に刻まれ続けています。クリストとジャンヌ＝クロードが何度も訪れたこの日本でのプロジェクトは、歴史に名を刻むこととなったのです。

もう一度検索