アンリ・ダバディ

アンリ・セレスタン・ルイ・ダバディ（Henri Célestin Louis Dabadie）は、1867年12月1日に生まれ、1949年10月19日にその生涯を閉じたフランスの画家です。彼は主に風景画の分野で知られ、その創作活動はフランス国内だけでなく、遠く北アフリカや東南アジアにまで及びました。

1867年、フランス南西部のピレネー＝アトランティック県、ポーの街で生まれたダバディは、パリへと移り芸術の道を志しました。彼は当時の著名な画家たち、すなわち歴史画や肖像画で名声を得ていたジュール＝エリー・ドローネー、そしてアンリ＝レオポルド・レヴィ（アンリ＝ミシェル・レヴィとも呼ばれる）に師事し、アカデミックな絵画技法を深く学びました。修行を終えた後、彼はフランス国内の美しい風景、特にブルターニュ地方の情景に魅せられて描写しました。また、国際的な視点も持ち合わせ、オランダのロッテルダムやドイツのハンブルクといった港湾都市の風景もキャンバスに収めています。

彼の作品は広く認められるようになり、1894年からはパリで開催される権威あるフランス芸術家協会のサロンに作品を発表し始めました。継続的な出品を通じて、彼の才能と努力は評価され、1895年には3等のメダル、1901年には2等のメダルを獲得し、画家としての地位を確固たるものにしました。

サロンでの成功は、彼に新たな地での制作機会をもたらしました。フランス・オリエンタリスト画家協会からの助成を得て、ダバディは北アフリカのアルジェリアへと渡ります。アルジェに位置する「ヴィラ・アブドゥル＝ティフ」に1年間滞在しました。この施設は、イタリア・ローマにある在ローマ・フランス・アカデミー（ヴィラ・メディチ）の仕組みを模倣し、アルジェリアでフランスの芸術家が学び、創作するための留学施設として設立されたものです。ダバディは、異国情緒あふれるアルジェリアの光や色彩、文化に触発され、多くのオリエンタリスト作品を生み出しました。滞在期間中には、隣国のチュニジアへも足を運び、北アフリカの多様な風景や人々の生活を精力的に描写しました。このオリエントでの経験は、彼の画風に新たな深みと広がりをもたらしました。

キャリアの後半においても、ダバディの活動は続きました。1928年には、その芸術的な功績と貢献が称えられ、フランス国家からの最高の栄誉の一つであるレジオンドヌール勲章（シュヴァリエ）を受章しました。同年、彼はインドシナ賞を獲得します。この賞は、当時のフランス領インドシナ地域における文化や教育に寄与することを目的としたものであり、受賞の条件として、インドシナでの一定期間の活動が求められました。

賞を受賞したダバディは、ベトナムのハノイへと赴き、ヴィクトル・フランソワ・タルデューが校長を務めていたインドシナ美術学校（École des Beaux-Arts de l'Indochine）で美術教師として教鞭を執りました。植民地における美術教育の現場で、現地の若い世代にフランス絵画の技法や理論を伝授する貴重な機会を得ました。インドシナでの滞在もまた、彼の作品に新たな主題やインスピレーションをもたらしたと考えられます。

東洋での活動を終えてフランスに戻ったダバディは、その後も制作を続けました。1949年10月19日、パリ近郊のサン＝マンデの地で、81歳でその波乱に富んだ生涯を閉じました。アンリ・セレスタン・ルイ・ダバディは、アカデミックな訓練に基づいた確かな技術で、母国の穏やかな風景から、遠く離れたオリエントやインドシナのエキゾチックな情景までを描き出した画家として、その名を美術史に残しています。

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