アン・ボニー

アン・ボニー：伝説の女海賊

アン・ボニー（1700年 - 1782年4月?）は、18世紀のカリブ海で活躍した有名な海賊です。彼女は、男装して海賊の世界に飛び込み、ジョン・ラカムの手下として、またメアリ・リードと共に、その名を歴史に刻みました。

生い立ち

アンはアイルランドのコークで、弁護士ウィリアム・コーマックとメイドの間に生まれた私生児でした。父親はその後、家族を連れてアメリカのサウスカロライナ州チャールストン近郊に移住し、プランテーションを購入しました。

成長したアンは、男勝りで気が強い女性として知られるようになります。伝えられるところによると、彼女は癇癪を起こして女中をナイフで刺したという噂もありましたが、これはおそらく作り話でしょう。父親はアンに良縁を見つけようとしましたが、彼女は父親の承諾を得ずに、チャールストンにいた船乗りのジェームズ・ボニーと結婚してしまいます。これに怒った父親はアンを勘当し、彼女は夫と共にバハマのニュープロビデンス島ナッソーへと移り住みました。

初期のアンの人生については、キャプテン・チャールズ・ジョンソンの『海賊史』に記述されていますが、研究者の中には、ジョンソンによる脚色が多分に含まれていると指摘する者もいます。

海賊生活

当時のナッソーは「海賊共和国」と呼ばれる無法者の拠点でした。1718年にウッズ・ロジャーズ総督が島に到着すると、多くの海賊が王の恩赦を受け入れましたが、アンの夫ジェームズはロジャーズの情報提供者となり、近海の海賊に関する情報を提供することで、多くの海賊が捕らえられました。アンは夫がロジャーズのもとで働くことを快く思っていなかったと言われています。

その後、アンはナッソーの居酒屋でジョン・ラカム（通称キャラコ・ジャック）と出会い、恋に落ちます。ラカムはジェームズにアンと別れるように金を払うと申し出ましたが、ジェームズはこれを拒否し、ロジャーズ総督に報告しました。総督はアンを召喚し、彼女の行為を非難し、ラカムのような悪い仲間とは二度と関わらず、夫と貞節に暮らすことを約束させました。しかし、アンはラカムと共に駆け落ちすることを決意し、男装して海に出ます。当時の掟では、女性が男性に混ざって乗船して働くことは認められていなかったためです。

ラカムの乗組員の中には、アンの親友であるメアリ・リードがいました。メアリは以前に乗船していた商船が海賊に襲われ、ナッソーに連行された後、男装して海賊として振る舞っていたのです。アンが男装したメアリに言い寄った際、彼女が女性であることが発覚し、二人は親密な関係になったと言われています。海に出てしばらくして、アンが妊娠していることがわかると、ラカムは彼女をキューバに降ろし、現地の知人に世話をさせました。出産後、ラカムは再びアンを呼び寄せ、海賊行為を続けました。

1720年10月、ジャマイカの北岸でラカムの海賊船がジョナサン・バーネット船長の船に捕捉された際、ラカムを含む男性乗組員が船倉に逃げ込む中、アンとメアリは激しく抵抗しました。しかし、奮戦むなしく、彼女たちは捕らえられてしまいます。

1720年11月16日、ラカムはセント・ジャゴ・デル・ヴェガで死刑判決を受けました。ラカムとの面会を許されたアンは、「あなたが縛り首になるのは悲しいけれど、もっと男らしく戦っていたら、犬のように吊るされることはなかったのに」という辛辣な言葉を投げかけたと伝えられています。

その後

アンとメアリの裁判が行われ、死刑が宣告されましたが、二人が妊娠を主張したため、刑の執行は出産まで延期されることになりました。メアリはその後、獄中で熱病にかかり亡くなりましたが、アンは無事に出産したとされています。チャールズ・ジョンソンによれば、アンの刑が執行されることはなく、釈放されたのかどうかは不明です。一説によると、アンは有力者であった父親によって赦免され、1721年12月21日にジョセフ・バーリーという男性と結婚し、8人の子供をもうけ、1782年にサウスカロライナ州で82歳で亡くなったと言われています。

記録

アンについては、『海賊史』以外の資料にも記述があります。彼女に対する最初の言及は、1720年9月5日のウッズ・ロジャーズによるもので、ジャック・ラカムに関わりのある海賊として記述されています。

アン・ボニーは、その大胆な生き方と伝説的な活躍によって、今日でも多くの人々に語り継がれています。

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