アヴィニョン演劇祭

アヴィニョン演劇祭：芸術の街が沸き立つ夏の祭典

南フランスのアヴィニョンで毎年7月、約3週間開催されるアヴィニョン演劇祭は、世界中から演劇関係者や観客が訪れる一大イベントです。およそ9万人に及ぶ人口規模の町に、期間中は同数の演者と観客が集まり、街全体が活気に満ち溢れます。

二つの顔を持つ演劇祭：『イン』と『オフ』

この演劇祭は、大きく分けて『イン』と『オフ』の二つの組織によって運営されています。

『イン』(IN): 招待制のプログラムで、歴史は古く、権威ある演目やアーティストが選抜されます。アヴィニョンの旧教皇庁前庭をメイン会場とし、その他の劇場などでも公演が行われます。
『オフ』(OFF): 自主公演制で、若手アーティストや実験的な作品が多く見られます。街中の劇場、体育館、教会、カフェ、さらにはガレージなど、実に多様な場所で公演が行われ、ポスターが街に溢れ、活気ある雰囲気を作り出します。

両組織は独立して運営されており、『イン』の事務局が自ら『イン』と名乗ることはありませんが、『オフ』の活動家を招いた事例もあります。

多様な芸術表現：演劇の枠を超えた祭典

アヴィニョン演劇祭では、演劇のみならず、バレエ、ミュージカル、映画上映、コンサート、舞踊、コンテンポラリーダンス、マリオネット、マイム、そして騎馬オペラ、サーカス、大道芸に至るまで、多種多様な芸術表現が披露されます。2007年の『イン』では18ヶ所で34の演目が上演され、『オフ』では約120ヶ所で876件もの公演が行われました。

歴史：ジャン・ヴィラールから現代へ

演劇祭の歴史は、第二次世界大戦後の1947年に俳優・演出家のジャン・ヴィラールがアヴィニョン教皇庁の前庭で野外演劇を提案したことに始まります。ヴィラールは、市民に親しみやすい演劇を目指し、その姿勢は若者たちの共感を呼びました。初期には、ジャンヌ・モロー、ミシェル・ブーケといった著名な俳優も出演し、演劇祭は急速に発展しました。

1951年から1963年までは、ヴィラールがパリの国立民衆劇場の支配人を兼任したため、演劇祭は国立民衆劇場の座員による公演が中心でした。その後は他の演出家も招かれるようになり、1966年にはモーリス・ベジャールの『20世紀バレエ団』、1967年にはゴダール監督の映画『中国女』の上映など、新たな試みも取り入れられました。

1968年の五月革命の影響を受けながらも、演劇祭は発展を続け、様々な演出家がディレクターとして貢献してきました。しかし、2003年には失業保障の法律改訂に反対するストライキのため、中止を余儀なくされました。

『オフ』の躍進：自主公演の盛り上がり

『オフ』は1964年にアンドレ・ベネデットによる自主公演が端緒となり、その後、年々参加公演数が増加。1971年には38演目だったものが、2007年には876演目にまで膨れ上がりました。アラン・レオナールがディレクターを務める『アヴィニョン・パブリック・オフ』協会がプログラムを編集・配布することで、組織化が進みました。

日本の参加：世界舞台への挑戦

日本からも多くの劇団やアーティストがアヴィニョン演劇祭に参加し、国際的な舞台で活躍してきました。『イン』には観世栄夫、浅見真州らによる創作能や、MATOMA、大駱駝艦、SPACなど、様々な分野のアーティストが出演。『オフ』には雪竹太郎をはじめ、オンシアター自由劇場、劇団黒テント、劇団東京乾電池など、多くの劇団が参加し、日本の演劇の多様性を世界に発信しています。

アヴィニョン演劇祭は、単なる演劇祭を超え、国際的な芸術交流の場、そして街全体の文化イベントとして、毎年多くの観客を魅了し続けています。

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