ア・ディファレント・カインド・オブ・トゥルース

『ア・ディファレント・カインド・オブ・トゥルース』（A Different Kind Of Truth）は、アメリカ合衆国のハードロックバンド、ヴァン・ヘイレンが2012年に発表した通算12作目にあたるスタジオ・アルバムである。この作品は、バンドにとって複数の重要な節目が重なった、特筆すべき一枚となった。

前作『ヴァン・ヘイレンIII』から数えること14年という長い沈黙を破って届けられた本作は、特にリードボーカルのデイヴィッド・リー・ロスが復帰し、『1984』以来となる実に28年ぶりにヴァン・ヘイレンのスタジオ録音に加わったことで大きな注目を集めた。また、長年バンドのボトムを支えてきたマイケル・アンソニーに代わり、エドワード・ヴァン・ヘイレンの息子であるウルフギャング・ヴァン・ヘイレンがベーシストとして正式に参加したことも、このアルバムの大きな特徴の一つである。世代交代を経た新たな布陣での出発となった。

本作のリリースに際し、バンドは長らく所属していたワーナー・ブラザース・レコードから、新たにインタースコープ・レコードへと移籍した。これに伴い、日本国内での発売元はインタースコープの親会社にあたるユニバーサル・ミュージックが担当することになった。レーベルの変更は、バンドにとって新たな章の始まりを予感させる出来事でもあった。

アルバム制作については以前から音楽ファンの間で噂が囁かれていたが、2011年11月にインタースコープ・レコードとの契約締結と移籍が正式に報じられたことで現実味を帯びた。その後、2012年のツアーチケット発売が公式サイトで発表された直後に、満を持してアルバムの発売がアナウンスされたのである。そしてアルバムに先駆けて、2012年1月10日には先行シングル「タトゥー」がリリースされた。この曲は、本国アメリカの主要チャートであるBillboard Hot 100で最高67位、日本のBillboard Japan Hot 100では14位を記録するなど、一定の商業的成功を収めた。

収録曲は全て、バンドメンバーとデイヴィッド・リー・ロスとの共作としてクレジットされている。音楽的な内容については、過去の未発表曲やアイデアを基に再構築された楽曲が含まれているとも言われているが、その詳細は定かではない。なお、一部のバージョンではデラックス版として、関連映像を収録したDVDが付属された形態でも販売された。

このアルバムに参加した主要メンバーは以下の通りである。

デイヴィッド・リー・ロス: リード・ボーカルを担当。収録曲のうち1曲ではシンセサイザーを、別の1曲ではアコースティックギターも演奏している。
エドワード・ヴァン・ヘイレン: バンドの核であるギターに加え、バッキング・ボーカルも兼任した。
アレックス・ヴァン・ヘイレン: 鉄壁のドラミングでバンドのリズムを支えた。
ウルフギャング・ヴァン・ヘイレン: ベーシストとして新加入し、バッキング・ボーカルも担当した。

本作のリリースに合わせて、バンドは「ア・ディファレント・カインド・オブ・トゥルース・ツアー（A Different Kind of Truth Tour）」と題した大規模なワールドツアーを敢行した。2012年1月から2013年7月にかけて、アメリカ、オーストラリア、カナダ、そして日本を含む各地を回った。ツアー中には、バンド側の過密スケジュールを理由とした北米公演の多数延期や、エドワードが大腸憩室炎を患い日本公演が一時見送られるなどのアクシデントに見舞われたが、幸いにもエドワードは回復し、延期された日本公演も無事実施された。特に、日本公演の一環として行われた東京ドームでのパフォーマンスは録音され、2015年に公式ライブアルバム『ライヴ・イン・ジャパン』として発表されている。

『ア・ディファレント・カインド・オブ・トゥルース』は、エドワード・ヴァン・ヘイレンが2020年10月に逝去し、その翌月である同年11月にヴァン・ヘイレンが解散する以前に発表された、最後のスタジオ録音アルバムとなった。そのため、結果としてこの作品は、デイヴィッド・リー・ロスがリードボーカルを務めるヴァン・ヘイレンの最新にして最終スタジオ作品として、バンドの歴史において特別な位置を占めることとなったのである。

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